【プロスポーツチームから学ぶ ファンマーケティングとデジタル活用】セミナーレビュー
私は、生まれてから根っからのプロ野球のパ・リーグ党で、昨今のパ・リーグの隆盛や生まれ変わった横浜DeNAベイスターズの話、スポーツマーケティングには非常に興味があり今回参加させていただきました。ちなみに初めて生観戦したのは、テリーとスティーブがいたころの日生球場での近鉄対西武戦で客席はガラガラでしたが、西武のスティーブが空振りしたときにヘルメットが脱げて大笑いした記憶があります。
「ファンのためのスマホファーストなデータドリブンマーケティング※」
今回参加したのは、株式会社ヤプリ様が主宰するYappliオンラインセミナーの中からプロスポーツ業界を牽引するオピニオンリーダーをゲストにお招きし、ファンマーケティングとデジタル活用をキーワードに、マーケティングから経営戦略までのヒントをお話いただくオンラインセミナーです。その中から葦原和正氏の基調講演のレビューをお届けします。
※「データドリブン」の「ドリブン(Driven)」は直訳すると「データによって動かされる」、すなわち「データに基づいて動く」という意味です。
要するに、企業の経営やマーケティング活動などに関する判断・行動を、商品の売上数や傾向、Webサイトでのユーザーの動き、顧客の属性・嗜好といったさまざまなデータに基づいて決定するビジネススタイルのことを、「データドリブンマーケティング」と言います。
葦原一正氏プロフィール
1977年生まれ。2003年に外資系コンサルティングファームのアーサー・D・リトル(ジャパン)に入社、製造業の事業戦略立案、R&D戦略立案等に携わる。2007年にオリックス・バファローズ(オリックス野球クラブ)を経て、2012年にTBSからDeNAへ事業譲渡された横浜DeNAベイスターズに参画。社長室長として球団改革を推進。2015年公益社団法人ジャパン・プロフェッショナル・バスケットボールリーグに参画。事務局長として男子プロバスケットボールリーグ『B.LEAGUE』を立ち上げ。2020年、株式会社ZERO-ONEを創業。これまでの現場経験、ノウハウに基づき、スポーツビジネスに関するコンサルティングサービスを提供。2021年4月、一般社団法人日本ハンドボールリーグ代表理事就任。
著書「稼ぐがすべて」(あさ出版)、「日本のスポーツビジネスが世界に通用しない本当の理由」(光文社新書)
以上、セミナー資料より
データの活用法
従来のスポーツ界の発想だと、
普及「広める」→強化「強くなる」→事業「稼ぐ」
の考え方だが、
これからの発想は、
事業「稼ぐ」→強化「強くなる」、普及「広める」
「稼ぐこと」からすべてが始まる。勝ち負けではなく、データ活用が勝負の世界。
スポーツの最重要事業は、「チケット」セールス。すべての事業のエンジン部分。
その次に「スポンサー」、「物販」、「放映権」など。
スポーツビジネスの4大収入の一般的な考え方は、
チケット→プレイガイド
放送→地上波、ペイチャンネル
スポンサー→看板露出
グッズ→会場でのワゴン販売など
それに対して、
B.LEAGUEの事業方針は、「スマホファースト」
チケット→WEBチケット(直販)
放送→ネット中継
スポンサー→デジタルを中心としたアクティベーション
グッズ→EC
スマホひとつで完結できるシステムを作り上げていった。
データ取得の目的は?
ターゲットを明確にする。ターゲットペルソナは正確性より分かりやすさを重視する。
B.LEAGUE立上げの際はペルソナを、
・一人観戦型ではなく集団観戦型、おしゃれ
・家にいる事よりもお出かけ好き
・TVやPCではなく「スマホや雑誌」で情報収集
・発信やシェアも積極的/流行に敏感
というように設定した。
「ペルソナ」については、弊社が主宰している勉強会の1月のテーマとして扱いますので、ご興味がある方はぜひ、ご参加ください。
勉強会については、こちらから
データはボトムアップではなく、トップダウン/信念ありきで。
一般的なスポーツビジネスの考え方では、競技者=観戦者ではない。
競技経験者だからと言ってスタジアムまで足を運ぶとは言い切れない。
「野球の外野スタンドに高校球児はいない!」といった分析と思い込みから
競技者と観戦者を分けて考えがち。(ボトムアップのデータ活用)
B.LEAGUEでは、競技経験者=観戦者になりえる。
「する人と見る人は繋げていくべき!」という信念のもと、データ活用を進めていった。
(信念・ビジョンありきのトップダウン型のデータ活用)
「何ができそう」だけでなく、「何をしていくべきか」が大事。
ライトファンよりコアファンの属性分析が重要
実際にスタジアムに足を運んで観戦してもらうためには、来場する確率の低いライトファンを
ターゲットにするより足を運んでくれるコアファンの巻き込み力に期待した方が集客につな
がりやすい。コアファンが周りの人を誘いたくなる情報の提供を重視する。
たしかに、普段見ないスポーツを観戦しに行ったことの理由は、「友達に誘われて。」とか、
「知合いにチケットをもらって。」とかファンの人から巻き込まれる形で見に行くことが多い
ですね。私もB.LEAGUを初めて観に行ったときはよく行くお店の人達との観戦会がきっかけ
でした。
「スポーツを観る人」と「する人」のデータを連携。
データ活用の目的はBtoCと、そしてその先にBとB。
データは将来的な財産になるので、基盤は早めに作ったほうがよい。
結果、BtoBがやりやすくなる。
ファンを増やすマーケティングとお金を落とすマーケティングは異なる
ファン数と来場者数は非相関関係にあり、ファンが必ず球場に試合を見に来るかというとそうではない。
ターゲットや訴求ポイントも異なる。
ファンマーケティングの目的は、好きになってもらう事、来場マーケティングの目的は、来てもらう事
(お金を落とすこと)
スポーツマーケティイングにも「金の斧」は残念ながらないので、
思考同様、マーケティングにも「深さ」「広さ」「速さ」が重要
「広さ」まずは、市場全体を俯瞰する。
「深さ」やみくもに動かない。本質的メカニズムを突き詰める。
「速さ」時間は有限。7割方見えてきたら、ヒット&エラーを繰り返す。
徹底的に当たり前のPDCAをやり抜く。
まとめ
ファンマーケティングを運営側の立場から、ターゲット選定とデータ活用まで余すことなく解説してくれるとても勉強になる内容でした。
ぼくが触れてきた80年代のパ・リーグの牧歌的な雰囲気も好きですが、やっぱり選手にはファンがたくさんいるスタジアムで感動させるプレーをしていただきたいです。
信念(目標)を共有することから始まり、全体を俯瞰して現状把握をしてから、戦略を立てて、実行していく。そして、PDCAを徹底的に回していく。
これは、まさに弊社が経営者様向けに提供しているマーケティング経営サポートサービス「Labout」でやっている事に通じます。
私もいつかプロスポーツチームのマーケティングのお手伝いができたらマーケター冥利に尽きます。