コラム

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【どうして消費者を理解する必要があるのか、 理解すると何が変わるのか?】セミナーレビュー 

【どうして消費者を理解する必要があるのか、理解すると何が変わるのか?】セミナーレビュー

今回参加した株式会社JX通信社様主催のセミナーでは、アルコール度数1%未満を微アルコールとして新たなカテゴリと位置付け、「アサヒ ビアリー」などを展開する、アサヒビールの福冨貴之氏をゲストに迎え、「手法論」ではなく「どうして消費者を理解する必要があるのか」「理解すると何が変わるのか」という「そもそも論」について、パネルディスカッション形式で議論を深めました。

ゲスト:福冨 貴之氏

アサヒビール マーケティング本部 新価値創造推進部 担当副部長

2000年に新卒でアサヒビール株式会社に入社。千葉西、名古屋にて業務用営業職に従事した後、2005年1月からマーケティング部門に異動。糖質ゼロの発泡酒「スタイルフリー」の商品開発、宣伝部CM制作部門を経て、国産洋酒「竹鶴」ブランドのリブランディングなど、ビール類・RTD・洋酒・宣伝などに関わる。
その後、アサヒ飲料株式会社に出向し、「おいしい水」ブランド統括として、日本初の「ラベルレス商品」を立ち上げる。
2019年9月アサヒビール社マーケティング本部に復職。「スマートドリンキング」の新カテゴリー「微アルコール」の「BEERY」を商品開発・ブランディングを経て、現在はプレミアムカテゴリー統括を担う。

 

講演者:松本 健太郎氏

株式会社JX通信社 マーケティングセールス局 マーケティングマネージャー

 

【新市場を拓いたアルコール分0.5%の微アル「アサヒ ビアリー」】

「どうして消費者理解が必要か?」

メーカーの立場からしても、お客様を理解することが大事。
メーカー側の視点ではなく、お客様の立場(一消費者として)で商品に触れることを実践している。

お客様にとってなぜ価値があるか?
インタビューなどを通して勝手に共通化してしまうことを防ぐ。
調査するときのポイント「アホになる」「教えてください」、決して「誘導しない」

 

BEERY開発の裏側

今回開発した商品:BEERY(ビアリー)
アルコール度数0.5%のビール味飲料 微アルコール飲料

アルコール度数は 0.5% で酒税法上は酒類に該当せず、従来のノンアルコールビールとは異なる 「微アルコール」 との新ジャンルを開拓している。

 

「脱アルコール」製法

一度ビールを作ってからアルコールを抜く。

脱アルコール製法として独自の低温蒸留技術を採用した。蒸留温度を低温にしゆっくりと蒸留することで、ビールの香気成分をなるべく失わないようにアルコールを抜く製法。

 

ビアリーの開発の狙い

「微アルとしてはおいしい」ではなく、「おいしいけどこれって微アルなんだ!」と思ってもらえるビールを目指した。

ノンアルコールに抱いている不満に寄り添って開発。「なにか違う」「飲めるならビールがいい」「周りに合わせて仕方なくのんあるを頼む」など従来のノンアルコール飲料では、不満が解消されない。想定顧客の満たされない不満に向き合ってビジネスチャンスに繋げた。

 

ターゲット設定

ターゲット設定では、コミュニケーションターゲットの設定が大事。

「アルコール分が0.5%のビールテイスト飲料」だと消費者には伝わらない。

 

・なぜこの商品ができたのか背景を知ってもらう。お客様の理解を知る。
・共感してもらうポイントを探る。
・一度、メーカー側の立場から離れて考えてみる。

 

ビアリー購買層の約23%が20〜30代で半数以上がお酒を飲まないというミレニアル世代も、そのおいしさに気づいている。また、他のビールと一緒にBERRYを購入する顧客も多い。

 

参加者からの質問

Q.アンメットニーズ※の作り方 どうやって作るか?

A.いかに普段からお客様を理解しているかの把握が大事。
理解の深さが大事。量を出して質を深める。

※アンメットニーズ(仮説)とは、企業のマーケティング活動において、まだ満たされていない顧客の潜在的な要求・需要のこと。
BEERYの際は、①健康志向 ②同調思考 ③働き方改革 ④マインドフルネスと仮説を立てた。
→仮説を立てた後は、ブラッシュアップを重ねる。

Q.コロナ前後の需要の変化で起きた消費者理解は?

A.商品開発時期と新型コロナウィルスの流行が被った。通常対面で行っていたインタビューはオンラインで行った。ただ、コロナ禍でもできる限り直接対話は欠かさない。本質的なことは変わらず、手段が変わった。

 

 

まとめ

  • 時には消費者が不満として明確には意識できていないような気持ちに寄り添うことが大事

  • 言われてみたり見せられて初めて 「確かに不便だった」 「こういうものが欲しかった」 と思ってもらえる「不の解消」を目指す

  • そのためには、売り手側が一消費者の立場に立って顧客の満たされない気持ちを見出し、商品開発やマーケティングにつなげる

 

セミナーに参加するまでは、微アルコール飲料ってアルコールが苦手な人が飲むものでお酒好きな人は飲まないのではないかと思っていましたが、明日に備えてアルコールは控えたい時や、ゲームや映画を見ながら飲める”ながら飲み”を楽しむことをコンセプトにしており、ビールと一緒にBEERYを購入する人も多いそうで、私も夜更かししながら飲むときに選んでみようと思いました。飲み会などでお酒は苦手だけど、ノンアルコール飲料を頼むのは場が白けてしまうのではないかと不安な人にとっても「微アル」が広まれば、選択肢が広がり「不の解消」につながりそうですね。

「消費者理解」、「顧客思考」と言葉では理解できそうでも、実際にどんなことを実践すればいいかは今回のような事例に触れる事や仮説を立てて実践しながらブラッシュアップを進めていくことが大事です。弊社が提供しているマーケティング経営サポートサービス「Labout」では新商品や新サービスの開発をマーケティングアプローチでお⼿伝いします。