気になった記事を取り上げていきます
弊社が日経MJを購読しはじめて約3年。毎週、月・水・金に届いていますが、クライアントワークをしながら、経営をしながら、経営の勉強をしつつも、やはりマーケターとしてのインプット・アウトプットは大事にしたいところです。最先端の事例ではありませんが、今回も「蹞事(きじ)」やっていきたいと思います。
第1回の蹞事はこちら
第2回の蹞事はこちら
第3回の蹞事はこちら
①ロッキーがAIで発注
2023年になった今、ChatGPTが色々な企業で使われており、学生が論文を書いたらダメだの、色々と議論が交わされていますが、この記事は2021年のものでした。2年が経った今、振り返ると先進的な取り組みですよね。人工知能で商品ごとに需要を予測して発注するそうです。
(1)品切れや食品ロスによる損失を防ぐ
シノプス(大阪市)の自動発注システムを利用するそうですが、過去の販売実績をベースに、天候や曜日、店舗の立地などからその日の来店客数をAIが予測し、適切な数量を自動で発注します。品切れや食品ロスによる損失を防ぐだけではなく、従業員の入力作業が大幅に削減されますし、その時間を接客や店舗運営の質を向上させることが出来ます。
(2)日配品からスモールスタート
2021年内に県内全25店舗へ導入されているそうですが、最初は牛乳や豆腐など賞味期限の短い「日配品」から試験運用を始めました。その後、野菜や鮮魚などの一部生鮮品を除く全品目に広げていく予定だそうです。そもそも、ロッキーは店舗内に精肉や鮮魚の加工場が無く、益城町にある工場で一括管理しています。そのことから、通常では1店舗に10人程度必要な人員が4人で済んでいるそうです。AI発注だけではなく、スーパーの既存ビジネスモデルの変革に取り組んでいるのが素晴らしいですね。
(3)電子マネー「rocca」の導入
これは、AIよりも前から取り組んでいることですが、電子マネーの「rocca」を導入しています。コロナ禍になってから非接触型の決済は一層、注目を浴びることになりましたし、取り組む必要性を感じて導入する企業は増えたと思いますが、ロッキーはその5年前から導入していました。(熊本県民の方は、CMで見たことがあるんじゃないでしょうか) また、中堅スーパーでは県内で初めて「セルフレジ」も導入しています。繰り返しますが、コロナが起きてから非接触型の会計を取り入れたのではなく、労働生産性の向上のために先手を打っているのが素晴らしいですね。これからもロッキーの取り組みには注目していきたいと思います。
(4)まとめ
熊本の企業ですが、このように先手でDXやビジネスプロセスの改善に取り組んでいる会社があることは素晴らしいことだと思います。 わが社も、時代を先読みした施策を実施し、クライアントにも提供していきたいな、と改めて気が引き締まりました。ファーストペンギンになれるか、って勇気がいりますもんね。経営者の覚悟も必要です。まだまだ学ばなければならないことが沢山ありそうです。
②マーケティングが先進的だと思う企業ランキング
2021年のデータになりますが、コロナ禍で感じた結果なので企業にとっては真価が問われるタイミングでの調査になったでしょうね。コロナによって「マーケティング予算が減った」と回答した企業は3割に上り、少ない費用でどれだけの効果を出すか、という点ではマーケターの実力も試されます。DXに関しては人材不足がどの企業も課題のようでした。では、ランキングを見ていきましょう。
第1位 P&G
世界的なマーケティング巧者が第1位となりました。後述しますが、P&G出身のマーケターは各社で成果を上げており「P&Gマフィア」と呼ばれています。USJを再建しV字回復に導いた森岡毅 氏を筆頭に、日本マクドナルドやファミリーマートでCMO(Chief Marketing Officer)を歴任された足立光 氏、資生堂でCMOをされていた音部大輔 氏、吉野家をV字回復させた伊東正明 氏、日本コカ・コーラの最高マーケティング責任者の和佐高志 氏など枚挙に暇がありません。 そんなP&G社はファブリーズをはじめとしたヒット商品を連発しています。これだけ優秀なマーケターがいるので当然と言えば当然かもしれませんね。
第2位 Google
2022年にクッキーの利用制限を発表して話題を集めました。2023年でいうと、7月から従来のGoogle analytics(ユニバーサルアナリティクス)が終了し、GA4に移行することが大きな変化ですね。もはやマーケティングが先進的な企業なのか、そもそも企業のマーケティング活動がGoogleによって提供されているデータからきているのか、鶏と卵のような関係性にもなりつつありますが、それほど巨大かつ有益なプラットフォームを全世界に提供している時点で、世界でトップのマーケティング企業だと言えますね。
第3位 トヨタ自動車
日経トレンドが実施した、日本のマーケターへの調査結果なので、3位にはトヨタ自動車がランクイン。ちなみに、4位はサントリー、5位がソフトバンク、6位が楽天、7位がアップル、8位は同率でコカ・コーラ、ヤフー、リクルートが並んでいました。 世界的に見たらアップルが7位なんてありえませんが(時価総額1位の会社がマーケティング7位のわけない)、5位~7位までをスマートフォン関連が占めたのは今の時代を表しているな~、と思いました。
まとめ
当社も、小さいながらマーケティング企業として、頑張らないといけないなと思いました。 また、本来なら今の社員と一緒に会社のミッションやビジョンの為に少しずつでも進んでいきたいところですが、仮に当社を退職することになったとして、「熊本マーケティング研究所出身のマーケターは、やるなぁ」と思われるような会社にしていきたいな、と思いました。
③Web広告の手法が変わった
さきほどGoogleのところで少し触れましたが、2022年から始まったクッキーの利用制限。今さらだけど、人に聞けない!というあなたの為にザックリ解説します。ザックリなので、多少の言い切りや表現や解釈に関する文句は受け付けません。
(1)従来のWeb広告とは
きっと経験があると思いますが、例えば欲しい洋服があったとして、それを検索していたら、別のサイト(洋服とは全く関係が無い)を見ている時に、洋服の広告ばかりが表示される、ということがありませんでしたか?(今でも、あるとは思いますが) これは、サードパーティーが発行したクッキー情報を広告配信会社のサーバーが受け取り、それを個人の情報として関連がある広告として配信していた、という仕組みです。
(2)クッキーの利用制限で何が起きたのか
このサードパーティーと呼ばれる情報の取得に制限をかけたことにより、個人ごとへの広告配信が制限されます。「人に紐づいた広告配信」ではなく「人物像に基づく広告配信」に変わっていきます。 広告を届けたい消費者が見ると想定されるサイトを探して広告を出す為、「コンテクスチュアル(文脈)ターゲティング」が行われるわけですね。 GoogleのAIがサイトの中身を見て、例えば「20代女性が見そうだ」と判断した場合に、20代女性をターゲットにした広告が配信される、という具合ですね。今までは、20代女性という属性情報に対して広告を配信していました。
(3)Googleの基本方針は変わらない
検索者に最適な情報を届ける、というGoogleの基本方針は変わっていません。個人情報が勝手に抜かれているような状態になってしまったので、従来のやり方が最適な情報を届ける為に阻害因子となると判断したので、サードパーティーの利用制限という結論にいたったのでしょう。実際に、ターゲティング広告に対して「嫌悪感を抱いたことがある」と答えた人は、40%にのぼったそうです。(5,000人を対象に行った日本インタラクティブ広告協会の調査)
(4)まとめ
SEO対策、MEO対策にも通じる部分がありますが、どのようにして自社を認知させるか、という視点では広告のやり方として通用しないのかもしれませんね。マーケティングの基本に立ち返り、「自社の事が必要だと思っている人に、自社の事を知って貰う為には」という消費者(エンドユーザー)の視点に立つことを、今一度見直すべきなのかもしれません。
④カギとなる言葉「キーワード」
まあ、文字通りなんですが、マーケティング分野と消費分野のキーワード分布が載っていたので取り上げてみます。なんか世の中の流れというか、マーケティングのトレンドというか、、、 色々と見えてきますね。
(1)マーケティング分野のキーワード分布
縦軸が将来性、横軸が経済インパクトという2軸でマッピングされています。際立つのは、やはり「EC」でしょうか。将来性・経済インパクトのどちらも最高水準で、収益性も高い位置にあります。 新型コロナウイルス感染症の蔓延によって、飲食店を中心に来店型に頼らない売上の構築が課題となりました。 目立つのは、やはりWeb関連のキーワード。D2C(ダイレクトtoコンシューマー)や、動画マーケティング、インフルエンサーマーケティング、コンテンツマーケティング、ソーシャルメディアマーケティング、クラウドファンディング、クッキー代替技術など挙げればキリがないですね。
(2)消費分野のキーワード
こちらにもサブスク消費や、eスポーツ、クラウドゲームなどWebに関連したキーワードが並びましたが、特徴的なのは「サスティナブル消費」「シェアリングサービス」「ジェンダーフリー」「SDGs」など、社会的な活動がランクインしています。 その中でも、パーソナライズ化、お一人様、コト(体験)消費など、自分らしさや体験に価値を置くようなキーワードが入っています。 恥ずかしながら、知らない言葉もあったので、まだまだ勉強不足です。
(3)まとめ
毎年、日経トレンドが行っている調査なのでマーケターとしてはしっかりとアンテナを張っておきたいところです。もちろん、調査期間と紙面に載るまでのタイムラグがあるので、若干の懐かしさを感じますが、マーケティング環境をざっくりと理解するには非常に分かりやす分布図です。みなさんも参考にされてみて下さい。
⑤定額料金で車のコーティング
最後は、マーケティング分野と消費分野のどちらにも登場した「サブスク」の事例を取り上げたいと思います。 車のコーティング(撥水効果や防塵・防傷効果がある)の定額制のサービス「BeauCa(ビューカ)」です。宇都宮市のアペックスが提供しはじめた新サービスで、色々な分野で広がるサブスク型のサービスの中で『カーコーティング』というのは珍しいジャンルなのではないでしょうか。
(1)コーティングは年に1回程度
私も車に乗っているので分かりますが、車のコーティングなんて、やって年に1回くらいです。(私は2年に1回の車検の時くらいしかやらないかも) そもそも、コーティングって車にお金をかけない勢にとっては、そこそこ高額なサービスで、やったことない人も多いでしょうね。しかも、1回やれば1年間は持続する、とか、ハイクラスなサービスだと2年は効果が持続する、なんてこともあるので、定額制にする=効果が持続しない、という意味にも取られそうです。 どういうことだ? とこの記事に私の目が留まりました。
(2)室内清掃や洗車などのメンテナンスを含む
会員制のこのサービス「BeauCa(ビューカ)」は、メンテナンスの頻度に応じてシルバー、ゴールド、ブラックの3段階に分かれるそうです。高価格帯の中に複数の価格設定をしていますね。これはプレミアムプライシングというやつでしょうか。また、車のサイズによっても月額料金が変わるそうで、例えばメルセデスベンツのCクラスで月額20,900円だそうです。(新車の場合) 確かに、コーティングは年に一度、または買ったときにやったきり、というパターンも多い中で、室内清掃や洗車など、月に1度くらいは利用しそうなサービスを付加しておけば顧客のロイヤリティは高そうです。
(3)ターゲットは高級外車オーナー
記事には書かれていませんでしたが、おそらく月額20,000円くらいを車に(しかもローンではなくメンテナンス費として)使う層は、きっと高級外車に乗るような層なんでしょう。 1年間で50件の会員獲得を目指す、ということでしたが、仮に先ほどの単価だとサブスク型で月間100万円近くの売上になりますし、経営は安定しそうですよね。また、継続的に来店してもらうことで顧客のニーズを直接入手できるので、次のサービス展開も考えるヒントが見つかるでしょうし、顧客情報を基にしたビジネスモデルも展開できそうです。 特に、高級外車に乗るような人たちは日常生活でつく傷(例えば洗車で落ちない汚れや拭き傷、飛び石などの小傷)は気になったら直したい性分でしょう。
(4)まとめ
正直、ニーズあるのかな?と思うサービスではありますが、サブスク型のサービスでも他社がやっていないブルーオーシャンに飛び込む勇気って大事ですよね。魚が泳いでいない海の可能性もありますが、やってみないと魚が泳いでいるかなんてわかりません。当社でも、こういうチャレンジって大事だな、と思いました。 また、クライアントがそのようなサービスを開始し、日経MJに載るなんてことが起きたら、サポートするマーケターとしては冥利に尽きますね。
最後に
これで、日経MJの記事で気になったもののストックが無くなりました。 次に「蹞事(きじ)」を書くのはいつになるのか分かりませんが、最近は意識して本を読むようにしているので、本の紹介などが出来たらいいなと思っています。