コラム

Column

蹞訪 ~鈴木電設株式会社 鈴木 健太さん~

知人の社長様へインタビューをさせていただく「蹞訪」 第7回です。

第1回の「乳菓子屋株式会社 佐藤 憲史郎さん」はこちらから

第2回の「株式会社TAS ART 田崎 新二さん」はこちらから

第3回の「株式会社マスナガ 森 弘国さん」はこちらから

第4回の「株式会社アセット 國元 祐介さん」はこちらから

第5回の「ベトナムトレーディング株式会社 澤村 友里さん」はこちらから

第6回の「有限会社all-get 友口 賀南子さん」はこちらから

 

「この人の話を聞いてみたい」と思った社長さんへ色々と質問をぶつけさせてもらい、そこから学びを得ていく企画「蹞訪」(きほう)。当社の企業理念でもある「蹞」(ひとあし)は、そういう小さな1歩を大事にしようという想いがありますので、「どうやって事業を成長させたか」というサクセスストーリーよりも、「明日からこれを自社でもやってみよう」と思えるくらいの取り組みにフォーカスした記事にしていきたいと思います。

 

第7回目のゲストは、、、

第7回目には、鈴木電設株式会社 代表取締役 鈴木 健太さんにご登場いただきました。

 

<企業概要>

熊本市南区城南に本社がある、太陽光発電の販売、施工を行う会社です。他にも一般電気工事や空調工事などもされています。また「鈴木建設株式会社」という新築住宅事業、リフォーム工事などを行う会社も経営されています。鈴木さんのお父さんが2004年に「鈴木工業」として個人事業で創業され、2011年に法人化。2017年に事業承継をして代表になられています。現在は鈴木電設が13期目、鈴木建設が8期目となっていますが、話を聞いていく中で、特に鈴木さんが社長になられてからの会社の成長速度には驚かされました。

 

<従業員数>

鈴木電設株式会社

役員 4名

社員 16名

在宅ワーカー 2名

 

鈴木建設株式会社

役員 4名

社員 6名

 

<岡村との関係>

私が参加している「熊本イノベーションベース」でご縁がありました。入会3期目になりますが、今期から始まった新しいコンテンツで同じグループだったこともあり、色々とお話を聞かせていただく機会が増え、とにかくよく勉強をされていて、そして学ぶだけではなくキッチリ実践もされています。年齢的には私の1つ上ということで近いのですが、売上の規模、社員の規模などは当社と比べて遥かに上をいかれています。取り組みを聞かせていただくことで、自分自身の勉強になるだろうと思って依頼したところ、快く引き受けてくださいました。

 

 

お題:社員の育成に関して取り組んでいること

まずは創業の経緯から、お聞かせください。

鈴木 「高校を卒業して、大阪の電気工事の会社で働いていましたが、社長になりたいと思っていました。そんなタイミングで父が創業したのですが、大変そうだったので熊本に戻って手伝うことになりました。当時は、下請けの仕事ばかりでキツかったですね~。それでも、必死に働いてなんとか食っていける状態にはなってました。」

岡村 「親子での衝突とかは無かったんでしょうか?」

鈴木 「親子での衝突も多少はありましたが、創業期には契約書などをちゃんと交わさずに仕事をしていたこともあって、大きな工事代金が未回収になったことが印象深いですね。そうなったら親子喧嘩している場合じゃないでしょ笑」

岡村 「確かに、、、 社長になられる時も、お父さんが経営に口を出してくる心配とかはしませんでした?」

鈴木 「代表になる際に、経営に関しては口出しをしないことを父と約束してもらいました。実際に、ほとんど何も言って来なかったですね。当時は赤字だったので、ちゃんと経営の勉強をしないと会社が終わる、と思って色々な勉強をしました。父は、そうやって勉強してきた自分が決めた事なので、という感じでしたね。」

 

現在の事業についてお聞かせください。

鈴木 「鈴木電設の方は、太陽光発電システムの販売が売上の3割くらい、施工が7割という感じです。創業期は下請け100%だったんですが、私が大阪から戻ってきて2年で販売(直販)を始めました。」

岡村 「施工会社さんにありがちな、脱!下請けって感じだったんですか?」

鈴木 「もちろんそれもありますが、当時にお付き合いしていた販売店が、無理な売り方をしていて、施工後に辛い思いをしたことがありました。明らかにオーバースペックなものを高齢者に販売していたのですが、販売店は売るまでが仕事なので、その後のやり取りするのは弊社の職人です。良心の呵責がありますよね。そこで、やっぱり人に喜んでもらえるような仕事をしないといけないな、と思い自社でも販売を始めることにしました。」

岡村 「そういう業界って、価格競争になったり、流通量で仕入れ値が決まったりするイメージがあります。なかなか大変だったんじゃないですか?」

鈴木 「国内のメーカーだと、必ず商社を通して販売店へ卸されていました。私が目を付けたのは海外のメーカーです。どうやったらエンドユーザーに安く良いものを届けることが出来るのかを考えているメーカーと組むことができ商社を通さずに取引が出来ていました。販売店としては小さい規模になりますが、施工までワンストップで提供できるので、販売の利益を多少削っても施工で利益が出ればOKです。元々は下請けの工事だけをやっていた会社ですからね。価格競争になっても競合に勝つことが出来たのはそこが大きかったと思います。直販を始めて10年経ちますが、直販初年度と比較したら売上は100倍くらいになっています。」

岡村 「すごいですね!鈴木建設の方は、途中で立ち上げられた会社ですが、どういう経緯で設立されたんでしょうか?」

鈴木 「家というのは負債ですよね。住宅ローンを組んで購入します。家具などを含めて、お金を生むことはありません。しかし、太陽光を搭載することで、売電収入などがあれば唯一、お金を生むことができます。しかし、新築の住宅メーカーさんは、家を建ててもらう際に太陽光に予算を割かないんですよ。お客様の年収があって、そこから借りれるローンの限度額があると、より良い家を建ててもらうことが仕事なので。なので、自社で新築を立てれるように鈴木建設を設立しました。」

 

将来のビジョンをお聞かせください。

鈴木 「当社のミッションは『お客様に喜ばれる仕事を通じて成長し、夢ふくらむ会社を目指します。 ~ご縁のあるすべての人への感謝の心を育てます~』です。」

岡村 「創業期の、辛い経験を踏まえられてのことかと思います。では、そのためにあるべき姿として、ビジョンをお聞かせいただけますか?」

鈴木 「ビジョンは『ワクワク創造企業』です。今は、鈴木電設は太陽光の販売や施工を、鈴木建設では新築の住宅やリフォームをやっていますが、これがずっと続くことはありません。当社では新卒を採用しているので、その子達はまだ30年~40年は働くわけです。そうなった時に、今のビジネスモデルのままで生き残れるわけでは無いので、ワクワク創造企業になる必要があると思いました。」

 

 

ビジョン実現に向けた課題に対し、社員の育成という観点から取り組んでいることをお聞かせください。

鈴木 「とにかく建築業界は、DX化というよりデジタル化が遅れています。今だに、FAXでのやり取りも多いですし、ホワイトボードを使って工程管理をやっているなんてザラです。当社はまず、そこを変えました。社員全員にiPadとapple watchを支給しています。googleサイトで社内ポータルサイトを作成し、そこから社員のスケジュールなど様々な情報が閲覧できるようにしています。工程管理はスプレッドシートで行っていますが、もちろん社内ポータルから確認できます。」

岡村 「全員に支給って、凄すぎます。」

鈴木 「あとは会計リテラシーを上げることですかね。工事部の社員が材料の発注をしますので、原価意識が無いと利益は残りません。全社員で年に1回はMG研修をやっていますし、月に1回の全体会議では、あえて手書きで数字を書き込んで、利益率の計算をしてもらうようにしています。」

岡村 「売上が大きいので、原価率が1%変わるだけでも、全然違いますよね。」

鈴木 「あとはコミュニケーションでいうと、エマネジェティックスをやりました。(エマジェネティックスとは) 人それぞれの特性を色で判別することでミスコミュニケーションを減らす為です。これも、社内ポータルにある社員のページから、誰が何色なのかを確認することができます。長期の現場は〇色の社員の方が向いている、短期だけど複数の現場を同時進行するなら〇色の社員の方が適性がある、など采配にも活かすことができていますよ。」

岡村 「これは凄いですね!建設業でここに注力する会社ってなかなか無いんじゃないでしょうか!」

鈴木 「社員の育成という意味では、スタート地点となる採用も課題ですね。新規事業を始めるにあたって、熊本ではどうしても情報量が少ないので、東京に拠点を設けて活動しようと思っていますが、色々な会社を訪問して思ったのが、めちゃくちゃオシャレで魅力的な会社が多いんですよ。こんな会社で働きたい、と思える会社が多い。これじゃ、人の取り合いになっても勝てないな、と思いました。ワクワク創造企業になる為に必要な人材を採用できるか、その為には会社の魅力を発信できるか、ここは課題ですね。」

岡村 「鈴木さん自身は、若手社員の方と、どのように接しているんですか?」

鈴木 「若手社員から提案が上がってきたら、積極的に採用するようにしています。もちろん、全てが上手くいくわけではありませんが、今でも会社のルールや仕組みとして機能しているものの中には、若手社員からの提案で出来たものがたくさんありますよ。また、東京での活動が増えると、どうしても社長は仕事せんで遊んでる!と思われるかな~というのもあったんで、社員に感謝を伝えるようにはしています。『みんなのおかげで自分が動ける時間が出来たから、5年~10年後の売上を作る為に動けているよ』という感じですかね。」

 

 

熊本マーケティング研究所に対して一言頂きました。

岡村 「せっかくの機会なので、当社にも何か一言いただけたらと思います」

鈴木 「御社は補助金の仕事をされていますよね。中小企業にとって補助金が使えるか使えないかでビジネスの成長速度が変わります。積極的に情報発信をしてもらえると助かります。とにかく、補助金って知らないものが多すぎるんですよ。知っていれば使えたのに、という機会損失を無くしてくれたら非常に助かります。」

岡村 「ありがとうございます。補助金を有効活用して会社を成長させて利益を出して、そして納税という形で国に還元する。この好循環の一助になれば、という想いで補助金の仕事に取り組んでいますので、それは会社として取り組むべきですね。」

 

感想

前回から約8ヶ月ぶりにこの「蹞訪」で取材を行いましたが、やはり成長している会社の代表の話は勉強になりますね。本当はもっと色々とお話を聞くことが出来たのですが、興味の赴くままに聞いたので、コラムにすると話があっちこっちに行ってしまって書けなかった話もたくさんあります。しかし、私が鈴木さんに対して『凄い!!』と思ったのはそこではありません。掲げたミッションの後半部分『ご縁のあるすべての人への感謝の心を育てます』の通り、社員さんに対して『みんなのおかげで自分が動ける時間が出来たから、5年~10年後の売上を作る為に動けているよ』と感謝の気持ちをちゃんと伝えられていた点です。お忙しい中、取材に応じて下さった鈴木さんに感謝をして、結びたいと思います。