コラム

Column

マーケティングフレームワーク②消費者行動モデル

アラサー、秋。

暑さも和らぎ、朝夕は随分と涼しくなり秋の到来を感じるこの頃。この時期になると、あんなに暑くて嫌だったのになぜだか寂しく感じる、これは私だけではないはず。そして、9月生まれの私はついこの前、26歳になりまして「あぁ、自分ももうアラサーかぁ、、、」とさらに追い打ちをかけられ、なんとも言えない寂しさがマシマシになっております。

最近買ったもの
そんな気分を晴らすべく「自分に誕生日プレゼントでも買うか」と、Amazonで何かときめくものがないか探していました。そして「これ、欲しいっ!」というものがあったんです。モネとゴッホのアートパネルです。ビビッと来たんですよね飾りたいと。血の気の多い私ですから、見つけてから買うまで一瞬でした。

「いい感じじゃないですか???」

結構満足しているんですが、衝動的に買ったので忘れていました。最近靴も買っていたんですよね。知り合いがローファーを履いているのをみて「そういえば自分もローファー欲しかったんだよな」と。ネットとSNSで調べまくり、最終的には鶴屋であれこれ試しながら、説明を聞きながら、お財布と相談しつつ購入しました。そんなことすっかり忘れていまして、さすがに節約しないとなと反省しております。
さて、今回はこうした消費者の「買う」という行動にまつわるコラムを書きます。同じ何かを「買う」という行動でも、そこに至るプロセスは様々です。私が絵を買ったように衝動的に「えいっ、やー!」と買う場合もありますし、ローファーのときのようにじっくりいろんな情報を調べてから買う場合もあります。このような「買う」に至るまでの消費者の行動と心理を理解することで、消費者がスムーズに購入に至れるような施策設計に役立てることができます。今回は、そんな消費者理解をするためのマーケティングフレームワーク、消費者行動モデルのご紹介です。

 

消費者行動モデルとは

消費者行動モデルは広告業界から生まれたもので、もともとは広告という刺激に対して消費者がどんな反応をするのかを表したものでした。こうしたモデルは、商品・サービスを知ってから購入するまでの行動や心理プロセスをよく表しており、消費者への理解を深めることができます。また、消費者行動モデルを活用し、モデルに沿った施策を考えることで、消費者に対する適切なアプローチは何なのか、自社商品・サービスのマーケティング施策に足りてないことはないか、どんなメッセージを発信するべきか、などの把握などがしやすくなります。今回は消費者行動モデルの基礎になったモデルから、SNSやネットが普及した現代で新たに登場したモデルをいくつかご紹介していきます。

 

代表的な消費者行動モデル

AIDAモデル

AIDA(アイーダ/アイダ)モデルはAttention(注意) Interest(興味) Desire(欲求) Action(行動) の4つの頭文字を取って名付けられたモデルです。消費者の行動や心理を4つのフェーズに分けたモデルで、消費者は購入までにこの4つのプロセスを踏むという仮説です。提唱されてから100年以上経過しているモデルですが、今日までに生まれた消費者行動モデルの基礎になっているものです。

A(Attention)注意・認知
商品・サービスのことを全く何も、存在すら知らない消費者が「こんなのあったんだ!」「なんだこれ?」と目を止めるフェーズです。消費者が何かを買うには必ず、その商品・サービスを認知する必要があり、知らない商品は買いようがありません。

I(Interest)興味
注意、認知した商品サービスに消費者が「面白いなあ」や「いいかも」と感心を示しているフェーズです。

D(Desire)欲求
消費者が「欲しい」と思うフェーズです。興味を持った消費者が「この商品を購入すれば、自分の欲求や悩みを解決できる」と判断することで「欲しい」という欲求に繋がります。

A(Action)購入・行動
消費者が「これ買おう」や「よし買いに行こう」と実際に購入をするフェーズです。

このモデルに自社の商品サービスを当てはめて、消費者がスムーズにAIDAを進めて購入に至るには、「どんなマーケティング施策が考えられるか?」というように活用していきます。例えば架空の商品「使う度白髪が染まるシャンプー」(以降、白髪染めシャンプー)を発売するとして、このAIDAモデルに沿ったマーケティングプランを考えてみます。

「白髪染めシャンプー」のAIDAモデル

A(Attention)注意:店頭に商品を陳列し、ポスターも貼り出し注目を集める。

I(Interest)興味:有名人をポスターに起用し興味を引く。

D(Desire)欲求:使う度染まるというポイントや美容室とのコスト比較、ビフォーアフターを掲載し消費者の欲求を引き出す。

A(Action)行動:実際に商品をレジに持って購入してもらう。期間限定割引なども検討する。

 

AIDMAモデル

AIDAモデルの次はAIDMA(アイドマ)モデルをご紹介します。こちらは先ほどのAIDAモデルに、M(Memory)記憶のフェーズが追加されたモデルで、こちらも消費者行動モデルの基礎といえるものです。AIDAモデルは、購入までの期間が短いのに対しこの、AIDMAモデルは認知から購入までの間の期間を考慮したモデルです。商品をすぐに買えない状況、例えば家でCMを見かけた、電車の中吊り広告で商品を知った場合や、会社の休み時間にスマホで広告を見た場合など、購入までに期間が空く場合などをイメージしてみてください。

A(Attention)注意
商品やサービスの存在を認知するフェーズです。

I(Interest)興味
興味を持つフェーズです。

D(Desire)欲求
欲しいと思うフェーズです。

M(Memory)記憶
欲しいと思ったことを覚えている場合または、ふとした時に「そういえば欲しい商品あったんだった」というように思い出すフェーズです。記憶に残る工夫を考える必要があります。

A(Action)行動
実際に購入するフェーズです。

消費者は「欲しい」とせっかく思ったとしても、時間が経つと購買欲求が低下したり、そもそも商品・サービス自体を忘れてしまうものです。なので、AIDAの時の施策に加えて、消費者に思い出してもらうような施策や、Mのフェーズに働きかけて購入に繋がる施策を考えます。例えば強烈に記憶させるような工夫や、なるだけ多く目に触れるような工夫です。

「白髪染めシャンプー」のAIDMAモデル

A(Attention)注意:テレビCMを流す。

I(Interest)興味:有名人をCMに起用し興味を引く。

D(Desire)欲求: 使う度染まるというポイントやコストや手軽さ、ビフォーアフターを示し消費者の欲求を引き出す。

M(Memory)記憶:継続的にCMを流すや、口ずさみたくなるメロディーやキャッチフレーズをCMに盛り込むなどの工夫をする。

A(Action)行動:商品を記憶した消費者が実際に購入する。

 

インターネット時代の消費者行動モデル

AISASモデル

時代の変化とともに、消費者行動モデルも変化しています。こちらのAISAS(アイサス)モデルはAIDA・AIDMAをベースに、インターネットによる情報収集や情報発信を考慮に入れたモデルです。日本の広告会社 電通 が提唱した消費者行動モデルです。

A(Attention)注意
商品やサービスの存在を認知するフェーズです。

I(Interest)興味
興味を持ち商品を調べたくなるフェーズです。

S(Search)検索
商品・サービスについてインターネットで検索し詳細を調べるフェーズです。商品であれば買える場所など、店舗・サービスの営業時間や立地や口コミなども含みます。

A(Action)行動
実際に商品を購入するフェーズです。

S(Share)共有
購入した商品のレビューを書いたり、SNSで拡散するフェーズです。

 

「白髪染めシャンプー」のAISASモデル

A(Attention)注意:テレビCMを流す。

I(Interest)興味:有名人をCMに起用し興味を引く。

S(Search)検索:自社サイトや商品情報のページを充実させる。他の製品との比較がしやすいように差別化ポイント、優位性を提示する。

A(Action)行動:商品を消費者が実際に購入する。

S(Share)共有:レビューやSNS投稿を取り上げお客様の声として公開する。また投稿したくなるようなパッケージデザインやネーミングを工夫する。

 

SNS時代の消費者行動モデル

現代ではインターネットに加えて、SNSが消費者の購買行動に大きな影響を与えるようになりました。消費者行動モデルは、広告という視点から作られたものでしたが、SNSの普及により消費者との接点が多様化し、消費者行動モデルへも影響を与え、新たなモデルが考案されるようになりました。

ULSSASモデル

ULSSAS(ウルサス)モデルは、消費者の商品・サービス認知のきっかけが企業から発信される情報だけでなく、ユーザーの作り出す情報(UGC:User Generated Contents)によって作り出されている点に注目した、新しい消費者行動モデルです。

U(UGC)他ユーザーによる投稿
他の消費者の投稿を見て商品・サービスを認知し興味を示すフェーズです。

L(Like)いいね!
見た投稿に「いいね!」を押す。

S(Search)検索
SNSでさらに他の消費者の投稿を探し、自分と似ているユーザーやどんな人が使っているのか、どんな感想があるのかを調べるフェーズです。

S(Search)検索
ネット検索で商品・サービスを検索するフェーズ。店舗であれば立地や営業時間メニューを調べたり、商品であれば値段や買える場所を探したりするでしょうし、口コミを見たり、詳しいスペックを調べたりしている状態です。

A(Action)行動
実際に商品サービスを購入利用する。

S(Share)情報共有
SNSで商品サービスを拡散するフェーズです。

このULSSASの特徴は、これまでに紹介したモデルが企業が発した情報が起点であるのに対し、UGCが起点の消費者行動モデルになっているということです。つまりShare(共有)することでUGCが生まれ、別の消費者のULSSASに繋がっていくモデルになっています。

スターバックスの新作が出ると、私のインスタが知り合いやインフルエンサーの「新作飲んだよ!」投稿で埋めつくされるので、「どんな味なんだろう」と私もついつい飲みたくなるのですが、これもULSSASモデルに沿ったアプローチになってるなと感じます。あとは、スタジオジブリの映画「君たちはどう生きるか」も、宣伝を極端にしないことによって見た人が感想を投稿し、UGCが生み出されてULSSASが回っていく良い例だと思います。

「白髪が染まるシャンプー」のULSSASモデル

U(UGC)他ユーザーによる投稿:投稿したくなる映えるパッケージデザイン。商品で髪を染めた人にビフォーアフターを投稿してもらい、いいね数でプレゼントをするキャンペーンの実施。

L(Like)いいね!:嘘の情報や過度に購入を迫るメッセージを出さないようにする。サクラやお金を支払って依頼するような投稿はしない。

S(Search)検索:多くのユーザー投稿が上がるように、投稿のリポストや投稿に反応を示し、商品関連の投稿を盛り上げていく。

S(Search)検索:商品の詳しい情報の公開しておく。ユーザーの声の公開やレビュー数を増やしておく。

A(Action)行動:ネットから購入できるようにECを開設。

S(Share)情報共有:UGCのフェーズと同じく投稿したくなる工夫をする。

 

まだまだある消費者行動モデル

今回4つの消費者行動モデルの紹介になりましたが、まだまだ有名なものでもたくさん存在しています。売って終わりではなく購入後の満足設計、いわゆるカスタマーサクセスを考慮したAIDCAS(アイドカス/アイドキャス)モデルや、多様化した消費者の購買行動や情報取得方法に対応するため考案された、DECAX(デカックス/デキャックス)モデルやRsEsPs(レップス)モデルなどなど、このあたりについても機会があれば書いていきますので、是非またお付き合いください。

 

おわりに

新しい物から古いものまでたくさん存在する消費者行動モデルですが、「新しいから良い」「古いからもう使えない」というわけではなく、自社の商品・サービスやターゲットと相性の良いモデルを活用することが重要です。もちろん、既存のモデルで対応できない場合は、新たなフェーズを組み込んだオリジナルのモデルを作ることもできます。熊本マーケティング研究所ではそうした皆様のビジネスに合わせたフレームワーク活用はもちろん、様々な専門知識や経験を持つマーケターが皆様のマーケティングサポートをするLaboutを提供しています。

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