コラム

Column

今月の一冊③『ドリルを売るには穴を売れ』

みなさん、こんにちは。

KMLに入社して3ヶ月、まだまだ横文字に慣れない新米マーケターのアキヨシです。

 

さて、前回のブログ( 『大学4年間のマーケティング見るだけノート』 )でお伝えしましたが、しばらくは私のようなマーケティング初心者の方向けに、基礎・入門の本をご紹介していきたいと思います。

 

ということで!!

3回目となる「今月の一冊」はコチラ!

『ドリルを売るには穴を売れ』(ででん!)

マーケターの諸先輩方から、

「マーケティングの会社に入ったのに、まだこの本を読んでいなかったのか!?」

と怒られそうですが、すみません。初めて読みました・・・。

 

 

マーケティング入門書の定番

「マーケティング 入門書」 「マーケティング 初心者 本」

などでネット検索すると様々なサイトが出てきますが、本書はどのサイトでも必ず紹介されています。

本文にも

“この本の位置づけは「入門書である」。営業、販売企画、広告、マーケティングなどにかかわっており、「売ること」に関する体系的な理解をしたい方が、初めて手に取る本として書かれている”

 

と記載されています。

アキヨシにぴったりじゃないですか!!

 

そして本書を開いてまず感じたのは

「文字が多すぎなくて読みやすい!」

・・・アキヨシにぴったりじゃないですか!!

 

 

著者は、マーケティング脳トレーナー/MBA&中小企業診断士の佐藤義典(さとう よしのり)さん。

「戦略と戦術を結ぶ」ことを理念とする経営コンサルティング会社、ストラテジー&タクティクス株式会社の代表取締役社長です。

(ストラテジー&タクティクス株式会社HP:https://www.sandt.co.jp/

 

本書は、マーケティングで超重要な4つの基礎について、

入社したての新人マーケター売多真子(うれた まこ)さんが、赤字続きのイタリアンレストランを立て直す、というストーリー展開で分かりやすく解説されています。

 

その超重要な4つの基礎とは

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①ベネフィット-顧客にとっての価値

②セグメンテーションとターゲティング-顧客を分けて絞る(STP)

③差別化-競合よりも高い価値を提供する

④4P-価値を実現するための製品価格販路広告

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今回はその中でも、「ベネフィット」「差別化」に絞ってお伝えしようと思います。

 

1.ベネフィット-「顧客にとっての価値」

(1)ドリルではなく「穴」に価値がある

本書のタイトルにもなっていますが、

私が工具のドリルを売っているとします。

私にとっての売り物はドリルですが、顧客は必ずしもドリルを欲しているというわけではなく、ドリルが空けた「穴」を欲している。

つまり、顧客が欲している価値は「穴」であり、ドリルは「手段」に過ぎないのです。

この「穴」こそが、ベネフィットということになります。

 

これだけではわかりづらいと思いますので、もう一つ、腕時計を例として見てみます。

 

「今腕時計をしている方は、なぜ他の時計ではなくその時計を買ったのですか?」

著者がこの質問を数百人以上の方に行った際、こんな答えが多かったそうです。

・安かったから ・軽いから ・電池交換の手間が省けるソーラー充電だったから ・文字盤が大きくて見やすいから ・常に正確な電波時計が欲しかった ・結納返しに高級時計をもらった ・私服にもスーツにも合いそうなデザインだったから ・憧れのブランドを自分へのご褒美に

 

時計の基本的な価値はもちろん「時間がわかる」ということですが、それ以外にも上記に記載したような「価値」を時計は提供しており、これらすべてが顧客にとっての価値」=ベネフィットとなります。

つまり、「腕時計を買った理由」=ベネフィットなのです。

 

マーケティングでは「顧客の立場に立つこと」「顧客目線」が大切ですが、ここでもやはり重要なのは「顧客にとっての」というところですね。

 

 

(2)機能的ベネフィットと情緒的ベネフィット

上で挙げた腕時計のベネフィットは「機能的ベネフィット」「情緒的ベネフィット」に分類することができます。

「機能的ベネフィット」

・・・物理的で計測しやすいもの。時間がわかる、手間がかからない、見やすい、軽いなど腕時計本来の基本的な機能。

 

「情緒的ベネフィット」

・・・デザイン、憧れなど、腕時計本来の価値とはあまり関係のないもの。顧客の感情の分だけ存在する。

(例)高級ブランド時計の購入者「ブランド時計を買った達成感」「憧れの時計をしている自分」等

 

売れている商品、いわゆる人気商品は、この2つのベネフィット(価値)を対価よりも大きく満たしていることが多いんです。

例えば、「ルイ・ヴィトン」のバッグのベネフィットはこんな感じ。

 

では、価値を満たすには、具体的にどのようなことを満たせばよいのでしょうか。

 

 

(3)「価値」とは人間の「欲求」「欲望」

本書では、価値を満たすには人間の三大欲求を満たすことが重要であると述べられています。

ここでいう三大欲求とは、以下の通りです。

 

(2)の2つのベネフィットと同じように、人気商品はこれらの欲求を満たしていることが多いとされています。

例えば、人気のレストランは当然美味しい(生存欲求)ですし、店の雰囲気が良く他人を連れて行っても恥ずかしくない(社会欲求)、と2つの欲求を満たしています。

 

 

2.差別化-競合よりも高い価値を提供する

(1)3つの差別化戦略

本書では、マーケティングは「顧客にとっての価値を提供して対価をいただくこと」とされていますが、市場には競合が存在するため、顧客に自社商品・サービスを選んでもらうには、差別化が必要となります。

 

差別化を図っていくための考え方として外食をする時の気分(顧客の求める価値)を例に、「手軽軸」「商品軸」「密着軸」の「3つの差別化戦略」が挙げられています。

 

①「手軽軸」:

「手軽に済ませたい」というベネフィットがある顧客を狙った差別化戦略。夕食を決める気分でいうと、「早く、安く、近いところで手軽に」という時。「安くて早くてそこそこ美味しい」ファーストフードは、このベネフィットを提供している。

 

②「商品軸」:

「良い商品やサービス」で差別化するもので、「とにかく良いもの」を求めている顧客を狙った戦略。夕食を決める気分でいうと、「ゴージャスに、美味しいものを」、「サービスのしっかりしている、良い雰囲気のところで」という時。高級フレンチレストラン等がこの戦略をとり、材料も高級で店づくりもしっかりしているだけに、早くも安くもないが、味は一流。

 

③「密着軸」:

顧客に「密着」することで差別化する戦略。夕食を決める気分でいうと、「いつもの店」という時。自分の好みをよく知っていて味付けを調整してくれるような居酒屋や、黙っていても自分の好み通りに握ってくれる寿司店など。早くも安くもないが、自分のことや自分の好みを知ってくれている。

 

 

(2)差別化軸は必ず絞る

この差別化戦略でのポイントは、「軸を絞る」ということ。

というより、「手軽軸」と「商品軸」は相反する戦略なので、ひとつの会社でこの3つの差別化戦略をすべて行うことはほぼ不可能ですよね。

特に中小企業・小規模事業者においては貴重な経営資源を有効に使っていくためにも、差別化軸を絞り、どこかひとつで必ず勝てるという状態を作ることが重要です。

 

最悪なのは、3つすべてで中途半端な状態になることです。

ただ、ここでの注意点は、「ある軸に特化しても、他の軸でも平均以上の価値を提供しなければならない」ということです。

 

どんなに安くて早くても(手軽軸)、味がひどい(商品軸)ラーメン屋には行かないですし、どんなにおいしくても(商品軸)、店員の接客態度が劣悪(密着軸)な店には行こうと思いませんよね。

どの軸でも平均以上の価値を提供したうえで、一つか二つの軸で差別化することが重要です。

 

 

マーケティング脳を鍛えよう

本書の冒頭、序章として「マーケティング脳を鍛える」というチャプターがありました。

筆者は、「マーケティングのヒントに敏感で、マーケティング的な思考・発想ができること」をマーケティング脳と呼んでいるそうです。

“マーケティング脳を持っていると、マーケティングのヒントを発見した瞬間にだけ、「なぜこのようなメニューになっているのか」「なぜこの店員はこのようなセールストークにしたのか」「なぜこんな広告のメッセージになっているのか」と活発に働きだす。

このようなことを考えるだけで、マーケティングに対する感度・確度が高まり、いざ自分がビジネスに使うときのネタやヒントが増えていくのだ。”

 

私はまだマーケティング脳になれていませんでした・・・。

普段街を歩く際、自分で買い物をする際、飲食店へ行く際など、身近なところにたくさんのヒントが転がっていることに気づかされました。

 

ぜひみなさんも、普段買い物をした際に「自分はなぜこれを買ったのか」と分析してみてはいかがでしょうか!?