2023年3月から募集が開始されたIT導入補助金2023ですが、小出しに発表されたスケジュールも最終募集回まで決まりましたので、2023年12月時点でIT導入補助金2023を振り返っていきたいと思います。
IT導入補助金とは
IT導入補助金のしくみ
IT導入補助金は、中小企業・小規模事業者等の労働生産性の向上を目的として、業務効率化やDX等に向けた ITツール（ソフトウェア、サービス等）の導入を支援する補助金です。対象となるITツール（ソフトウェア、サービス等）は事前に事務局の審査を受け、補助金HPに公開(登録)されているものとなります。また、相談対応等のサポート費用やクラウドサービス利用料等も補助対象に含まれます。補助金申請者（中小企業・小規模事業者等）は、IT導入補助金事務局に登録された「IT導入支援事業者」とパートナーシップを組んで申請することが必要となります。
IT導入支援事業者とは
IT導入支援事業者とは、ITツールの導入により生産性の向上を目指す中小企業・小規模事業者等と共に事業を実施するパートナーとして、中小企業・小規模事業者等に対するITツールの説明、導入、運用方法の相談等のサポート、及び補助金の交付申請や実績報告等の事務局に提出する各種申請・手続きのサポートを行う事業者です。新たに登録する場合は事務局登録申請を行い、事務局及び外部審査委員会による審査の結果、採択される必要があります。なお、熊本マーケティング研究所は2020年からIT導入支援事業者となっており、登録しているITツールはECサイト構築になります。
中小企業・小規模事業者とは
日本国内で法人登記（法人番号が指定され国税庁が管理する法人番号公表サイトにて公表されていること）され、日本国内で事業を営む法人又は個人であり、生産性の向上を目的として、それに資するITツールを導入する中小企業・小規模事業者等です。
補助対象について
通常枠（A・B類型）
”自社の課題にあったITツールを導入し、業務効率化・売上アップをサポート”
中小企業・小規模事業者等が自社の課題やニーズに合ったITツールを導入する経費の一部を補助することで、業務効率化・売上アップをサポートするものです。自社の置かれた環境から強み・弱みを認識、分析し、把握した経営課題や需要に合ったITツールを導入することで、業務効率化・売上アップといった経営力の向上・強化を図ってることを目的としています。
通常枠（A・B類型）の補助額
A類型（補助率1/2以内）・・・5万円以上150万円未満
B類型（補助率1/2以内）・・・150万円以上450万円以下
※ソフトウェア購入費、クラウド利用料（最大2年分）
通常枠（A・B類型）の気を付ける点
ITツール要件として7つの業務プロセスを保有しているソフトウェアでなければなりません。
共通プロセス・・・①顧客対応・販売支援／②決済・債権債務・資金回収管理／③供給・在庫・物流／④会計・財務・経営／⑤総・人事・給与・労務・教育訓練・法務・情報システム
業務特化プロセス・・・⑥その他業務固有のプロセス
汎用プロセス・・・⑦汎用・自動化・分析ツール（業種・業務が限定されないが生産性向上への寄与が認められる業務プロセスに付随しない専用のソフトウェア、A類型での単体での使用は不可）
※A類型は上記のうち、1種類以上の業務プロセスを保有するソフトウェア。B類型は上記のうち、4種類以上の業務プロセスを保有するソフトウェアとなります。
セキュリティ対策推進枠
”高まるサイバー攻撃事案の潜在リスクを踏まえ、サイバーインシデントが引き起こすさまざまなリスクの低減を支援”
中小企業・小規模事業者等がサイバーインシデントが原因で事業継続が困難となる事態を回避するとともに、サイバー攻撃被害が供給制約や価格高騰を引き起こす潜在的なリスクや生産性向上を阻害するリスクを低減することを目的としています。
セキュリティ対策推進枠の補助額
サービス利用料の1/2以内・・・5万円以上100万円以下
※ITツールの導入費用及び、サービス利用料（最大2年分）
セキュリティ対策推進枠の気を付ける点
補助の対象となるITツールは、独立行政法人情報処理推進機構（IPA）が公表する「サイバーセキュリティお助け隊サービスリスト」に掲載されているサービスのうち、IT導入支援事業者が提供し、かつ事務局に事前登録されたサービスのみとなります。
デジタル化基盤導入枠（デジタル化基盤導入類型）
”会計ソフト、受発注ソフト、決済ソフト、ECソフトに特化し労働生産性の向上をサポート”
中小企業・小規模事業者等が導入する会計ソフト・受発注ソフト・決済ソフト・ECソフトの経費の一部を補助することで、インボイス対応も見据えた企業間取引のデジタル化を推進する。
デジタル化基盤導入枠（デジタル化基盤導入類型）の補助額
≪ソフトウェア等≫
補助率3/4以内・・・下限なし〜50万円以下
補助率2/3以内・・・ 50万円超350万円以下
≪ハードウェア≫
PC、タブレット等・・・10万円以下
レジ、券売機・・・20万円以下
※ハードウェアについては補助率1/2以内
デジタル化基盤導入枠（デジタル化基盤導入類型）の気を付ける点
「会計」・「受発注」・「決済」・「EC」の機能を有するソフトウェアは必須となります。
ソフトウェア+オプション+役務、ハードウェアが補助対象です。
補助対象として認められるハードウェアは「PC / タブレット / プリンター / スキャナ / 複合機POSレジ / モバイルPOSレジ / 券売機」となっており、小規模事業者持続化補助金などでは認められないものも対象となっています。
デジタル化基盤導入枠（商流一括インボイス対応類型）
”インボイス制度に対応した受発注システムが対象”
中小企業・小規模事業者等の取引のデジタル化による労働生産性向上及びインボイス制度への対応を促進するために、取引関係における発注者の費用負担によって導入されるITツールの費用の一部を補助します。
デジタル化基盤導入枠（商流一括インボイス対応類型）の補助額
中小企業・小規模事業者等・・・補助率2/3以内、下限なし〜350万円以下
その他の事業者等・・・補助率1/2以内、下限なし〜350万円以下
デジタル化基盤導入枠（商流一括インボイス対応類型）の気を付ける点
補助対象となるのは受発注ソフトのみです。
インボイス制度に対応した受発注の機能を有しているものであり、かつ取引関係における発注側の事業者としてITツールを導入する者が、当該取引関係における受注側の事業者に対してアカウントを無償で発行し、利用させることのできる機能を有するクラウド型のソフトウェアで、クラウド利用料（最大2年分）が対象となります。
デジタル化基盤導入枠（複数社連携IT導入類型）
”業務上つながりのある「サプライチェーン」や、特定の商圏で事業を営む「商業集積地」に属する複数の中小企業・小規模事業者等が連携してITツールを導入し、生産性の向上を図る取り組みを支援。”
複数の中小企業・小規模事業者が連携してITツール及びハードウェアを導入することにより、地域DXの実現や、生産性の向上を図る取組に対して、複数社へのITツールの導入を支援するとともに、効果的に連携するためのコーディネート費や取組への助言を行う外部専門家に係る謝金等を含めて支援するものです。
デジタル化基盤導入枠（複数社連携IT導入類型）の補助額
*基盤導入経費と消費動向分析経費の合計額は3000万円が上限
**補助上限額は(基盤導入経費と消費動向等分析費の合計額)×10%×(補助率2/3)もしくは200万円のいずれか小さい額
今後のスケジュール
IT導入補助金2023の応募スケジュールは2024年1月29日（月）17:00が最終締切となります。各枠で募集回が異なりますので、各枠の募集スケジュールは以下の通りとなります。
通常枠の応募スケジュール
≪9次締切≫
申請締切・・・2023年12月25日（月）17:00 ／ 交付決定日・・・2024年1月29日 （月） （予定）
≪10次締切（最終回）≫
申請締切・・・2024年1月29日（月）17:00 ／ 交付決定日・・・2024年3月8日 （金） （予定）
セキュリティ対策推進枠の応募スケジュール
≪9次締切≫
申請締切・・・2023年12月25日（月）17:00 ／ 交付決定日・・・2024年1月29日 （月） （予定）
≪10次締切（最終回）≫
申請締切・・・2024年1月29日（月）17:00 ／ 交付決定日・・・2024年3月8日 （金） （予定）
デジタル化基盤導入枠（デジタル化基盤導入類型）の応募スケジュール
≪15次締切≫
申請締切・・・2023年12月25日（月）17:00 ／ 交付決定日・・・2024年1月29日 （月） （予定）
≪16次締切≫
申請締切・・・2024年1月15日（月）17:00 ／ 交付決定日・・・2024年2月19日 （月） （予定）
≪17次締切（最終回）≫
申請締切・・・2024年1月29日（月）17:00 ／ 交付決定日・・・2024年3月8日 （金） （予定）
デジタル化基盤導入枠（商流一括インボイス対応類型）の応募スケジュール
≪6次締切≫
申請締切・・・2023年12月25日（月）17:00 ／ 交付決定日・・・2024年1月29日 （月） （予定）
≪7次締切（最終回）≫
申請締切・・・2024年1月29日（月）17:00 ／ 交付決定日・・・2024年3月8日 （金） （予定）
デジタル化基盤導入枠（複数社連携IT導入類型）の応募スケジュール
≪5次締切（最終回）≫
申請締切・・・2024年1月29日（月）17:00 ／ 交付決定日・・・2024年3月8日 （金） （予定）
まとめ
枠によって異なりますが、IT導入補助金2023の募集回も残り僅かとなりました。特に募集回数が多く、熊本マーケティング研究所がITツールとして提供している『デジタル化基盤導入枠（デジタル化基盤導入類型）』も残り3回の募集となっております。
注目すべきは交付決定日です。IT導入補助金は交付決定日イコール採択発表日となります。IT導入補助金は申請締切から交付決定日まで約40日と、他の補助金と比較すると交付決定までの期間が非常に短いのが特徴です。早い募集回で申請して、もし不採択の場合でも同じ年度内であれば次の募集回で再申請することができるのもIT導入補助金ならではです。しかし、最終募集回が決まってしまいますと、これから申請しても不採択の場合は2024年度で申請することになるので、申請できるまで3～4か月も空いてしまいます。
IT導入支援事業者には、すでに来年度のIT導入補助金の情報が届いてきておりますので、年末から年始にかけて事業者登録とITツール登録を行っていく予定となっております。年が明け2024年1月もしくは2月からITツールの導入を図りたい事業者にとっては、年内に申請しておくとよいかと思います。
