コラム

Column

時流を読む~大手メーカーの戦略について〜

はじめに

熊本マーケティング研究所の高宗将(たかむね すすむ)です!今月は日経MJをコラムにしていきます。今回は大手メーカーの戦略の見直しについての記事を特集していきます!また、自分なりの目線をいれた新たな取組みもしていますので、ぜひお楽しみください!

 

花王のヘアケア事業改革 – 三つの「クセ」に挑む

花王は看板のヘアケア事業で、縦割り体制、統一できないブランドイメージ、伝わらない広告という三つの「クセ」を矯正する挑戦を行っています。「メリット」や「エッセンシャル」などの長寿ブランドを抱えながらも、シェアは4年ほど低下し続けていました。ヘアケア事業の改革を会社全体のロールモデルと位置づけ、業績回復の象徴としようとしています。

出展:7月1日 日経MJより

 

縦割り体制の打破!

かつて、花王の部門間の連携不足により、商品開発に時間がかかり、最低でも2年程度が必要でした。しかし、現在は消費者が多様なコンテンツに触れる時代となり、商品開発のスピードが求められるようになっています。そこで花王はスクラム型の商品開発を取り入れ、各部門の代表が参加するスクラム会議を設けました。この会議では、マーケティング担当者が消費者のアンケート結果を基に意見を交換し、研究担当者が応答する形で進行します。これにより、商品開発のスピードが向上し、5月にはヘアケア事業全体で約4年ぶりに単月の市場シェアが前年を上回る成果を上げました。

将目線で読み解く
上記について、各部門が直接議論しないことで、商品開発を巡り「ズレ」が生じて、合意形成までに時間がかかったのではないかと思います。また、マーケティング担当が消費者にリサーチした結果を反映させ、「こういうコンセプトで商品開発したほうが良い」などの方針を出しても、部門をまたぐことで認識がずれ、方向性が変わってしまうことがあります。マーケティング部門や営業部門、商品開発部門など顧客と接する機会は異なります。お互いが意見を出し合うことで顧客目線に立った戦略が打ち出せ、直接議論することで方向性の「ズレ」が発生しないため、開発までのスピードが向上すると思います。

ブランドイメージの統一

花王のヘアケア事業では、ブランドイメージの統一が課題となっていました。例えば、「メリット」や「エッセンシャル」には複数のシリーズが存在し、その結果、ブランドのイメージが曖昧になっていました。新たなシリーズの連発はイメージのブレを招き、売上高の減少に繋がりました。今後、花王は基幹ライン以外のシリーズを廃止し、ブランドイメージを明確にするために色合いを統一します。「メリット」は「自然体・リラックス」の淡いグリーン、「セグレタ」は洗練された印象の紫、「エッセンシャル」は「ポジティブ・リフレッシュ」の虹色基調を採用し、各ブランドが持つイメージを明確化しています。

将目線で読み解く
上記について、メリットは「家族シャンプー」としてのブランドで打ち出していましたが、近年、「女子高生向け」、「高齢者向け」など従来とは違うターゲットに向けたシリーズを販売しました。その結果、ボトルの色や形もすべてバラバラで、メインとなる「家族シャンプー」というイメージを消費者が持たなくなりました。その結果、「家族と一緒に使える」というイメージを持つ人は、最盛期に比べ約2割減少したそうです。この事例は、自分たちの強みや、ターゲットとする消費者のイメージに「ズレ」が発生したことで、「家族シャンプー」というブランドイメージが低下したのではないかと思います。ブランドをつくる上で「どの顧客に」、「どう思ってほしいか」ということが重要になります。そこが「ズレ」ると、ターゲットとする顧客が離れていってしまいます。花王の明確で一貫性のあるブランド戦略は、競争の激しい市場での差別化を図るための重要な要素ではないかと思います。

感情に訴える広告戦略

花王はこれまで、商品の成分や効能を強調するPR手法を取っていましたが、現代ではそれだけでは消費者の購買行動に繋がらないことが多くなっています。そこで、花王は感情に訴える広告戦略にシフトしています。新しく始めた「メリット」のCMでは、「子供が初めて自転車に乗れた日」をテーマにし、「エッセンシャル」では人気アイドルグループ「ニュージーンズ」が登場する爽やかなシーンを描いています。

将目線で読み解く
ブランディングをする上で、ターゲットとする顧客に自社が考えるブランドをどう伝えるかが重要になります。上記では、「家族シャンプー」としてのメリットを伝えるときに、商品の成分や効能を強調するのではなく、家族を連想できる伝え方をしたほうが、「家族シャンプー」としてイメージを持つことができると判断したのではないかと思います。また、「エッセンシャル」においては、若年層の消費者をターゲットにした戦略ではないかと思います。アイドルグループの爽やかなシーンを描くことで、若年層の共感を得やすくなります。このように、ターゲットの消費者にいかに共感してもらえるかが重要です。共感してもらうことで顧客がファンになり、継続的な顧客となります。共感することで、ターゲットの消費者に、「このブランドはこういうイメージ」だと思ってもらうことが重要となります。

まとめ

今回は大手メーカーである花王の戦略の見直しについての記事を特集しました。自社の方向性をもう一度見直す良い事例ではないかと思います。今回、花王は業績低迷により見直しをしましたが、業績が好調な時においても見直しは必要です。最低でも年1回は自社の方向性を見直した上で、サービスや商品が「ズレ」ていないか、広報や広告が「ズレ」ていないかを確認し、問題がある場合は軌道修正が必要になります。コラムを読んだ方は、一度見直しを検討してみてください。

 

最後に

今回は戦略やブランディングについての記事を特集しましたが、この記事を読んで、どう方向性を見直せばいいのか、ブランディングについて分からないという方がいるかもしれません。弊社では毎月、月例勉強会を開催しており、マーケティングのフレームワークを使用した戦略の考え方などを講義させて頂いております。今期は「ブランディング」をテーマに月例勉強会を開催していますので、興味のある方はぜひご参加ください!

8月の勉強会では大手メーカーで商品開発に携わっていた熊本県立大学教授の丸山先生をお呼びして、講義をして頂きます!メーカーのブランディング手法についてお話して頂き、とても面白い勉強会となりますので、ぜひご参加ください。
>>2024/8/3(土) 勉強会のお知らせ