はじめに
久しぶりのコラム執筆になりました、マーケターの宮﨑です!
今回はマーケティングの勉強に「独学で取り組んでいる方」や「どう勉強していいか分からなくなってきた!」という、既に勉強を始めている方向けのコラムになっています。私は学生時代からマーケティングに興味があり、勉強を続けてきましたが、改めて基礎的な本を読んでみることにしました。そこで気付いたことが多く、「マーケティングを学んでいる方にも役に立つのでは?」と思ったのでコラムにまとめてみました。
マーケティングの複雑さ
突然ですが、「マーケティングの勉強って難しくないですか?」
マーケティングの勉強方法として、ぱっと浮かぶのは「本を読む」「動画を見る」などかなと思います。自力で学ぼうとすると、このあたりのやり方になりますね。そこで本屋に行ったとしましょう。すると「マーケティング」という棚には、実にたくさんの本が並んでいます。数冊手に取ってみると「マーケティングって何だ?」と疑問が湧いてくるかもしれません。「SNS」について書かれた本や「株式会社○○の売上を倍増させた、たった●個の方法」といった本、そしてもはや「経営戦略」について書かれた本など様々です。これらは、マーケティングについて書かれた本のようですが「何を学べばマーケティングの力がつくのか」「そもそもマーケティングとは何か」は非常に分かりにくいです。おそらく本屋の本を、手当たり次第に読んでも、マーケティングの全体像を掴むのは困難でしょう。全体像や輪郭が分からないと「何を学べばいいのか」「自分に何が必要なのか」が見えてきません。そこで、今回紹介する本が重要な役割を果たしてくれます。煩雑なマーケティングの情報を体系的に整理し、マーケティングの全体像を掴む手助けになる一冊です。
今月の一冊
有斐閣アルマ『マーケティング戦略』
有斐閣アルマ(ユウヒカクアルマ)は、有斐閣が刊行している学術書シリーズの一つで、主に大学生や専門的な学びを深めたい読者を対象に、基礎的かつ重要なテーマを扱った書籍を提供しています。中でも本書は、マーケティングを専門的に学ぶ人に向けた教科書的な一冊です。こうした本を読むのは面倒かもしれませんが、非常に重要だと改めて感じることが多かったので、コラムにまとめました。
なぜマーケティングの情報は煩雑なのか
なぜ本屋のマーケティングの棚には多様な本が並ぶのか、また、マーケティングが分かりにくいのかについて、本書を読んでいく中で私なりに考えたことを、「マーケティングの4つの要素」と「マーケティングの3つの視点」にまとめてお伝えします。この2つは、わかりにくいマーケティングの情報を整理する手助けになると思いましたので、ぜひ読み進めてみてください。
マーケティングの誕生
マーケティングを学ぶ前に、なぜマーケティングが必要なのかについて考えます。熊本マーケティング研究所では、「マーケティングとはセリングを不要にすること」、つまり「買ってください!」ではなく、顧客から「欲しい!」と思ってもらうための活動であると定義しています。本書でもこのような言及がされているのですが、そもそも、なぜ「買ってください!」というセリングではダメなのでしょうか。それは産業や消費者・市場の変化など、社会的な変化が関係しています。
かなり乱暴かつ大雑把に流れを説明すると、昔は企業が作りたいものを作って市場に出すと勝手に売れる時代があり、その後、市場に物が溢れると、セリングによって顧客に販売する時代に突入しました。しかし、ここまでは「企業が作りたいものを作る時代」で、それをどのように営業部隊が売るかが重要視されていました。市場が求める物を作るという考え方ではなかったのです。しかし、競争が激しくなると、企業は消費者に選んでもらわなければならない時代になりました。そこで誕生したのがマーケティングであり、その活動の構成要素であるマーケティングミックス(4P)を考えることが必要となったのです。つまり、供給過多(モノ余り)で、企業間の競争が存在する市場では、顧客に選ばれるための活動として、マーケティングが必要となります。この状況は現在の市場も同じなので、マーケティングの必要性があるわけです。今回はこれについて話したいわけではないのでかなり乱暴に流れを説明しました。マーケティングの歴史については、今後の弊社の別コラムで扱うのでそちらをぜひご覧ください。
【関連コラム】
>>>コトラーのマーケティング1.0~5.0<1.0編>
マーケティングの4つの要素
マーケティングの具体的な活動として、標的市場をSTP(セグメンテーション、ターゲティング、ポジショニング)によって定義し、その市場に向けて4Pを使って商品を導入していくことが挙げられます。マーケティングの4Pは、Product(製品)、Price(価格)、Place(流通チャネル)、Promotion(販促)の4つの要素から成り立ちます。この4つの要素をターゲットに向けて、調整していくことで効果的なマーケティング戦略を構築します。
あくまで私の印象ですが、本や動画でよく取り上げられるのは、プロモーションが多いです。また、ECサイトやオムニチャネルが話題になった時期には、それらプレイスについての本も多く見られました。しかし、あくまでECやオムニチャネルについてで、広く流通チャネルについて扱うものは多くありません。それから、プロダクトやプライスについて言及する本も少ないかと思います。プライスについての本は、ミクロ経済学や心理学などアカデミックな要素が多く難解(つまらない)であったり、製品については個別的すぎて自分のものにするのが難しかったりします。学生時代、講義で「マーケティングとは何か?」という先生からの質問に「宣伝すること」「広告を打つこと」といった回答が多く学生から挙がったのですが、前述のような情報の偏重があるからかもしれません。
マーケティングの活動では主に上記4つの要素を扱っているので、本や動画でも、それぞれについて言及していたり、または、ごっちゃ混ぜになっていたりすることが、煩雑さを生んでいるのかなと思います。本書では、4Pそれぞれについて、ほぼ一冊を使って説明していきます。なかなかこのボリュームかつ、基礎的な内容を網羅的に扱ってくれている本は少ないかなと思います。
【関連コラム】
>>>STPについてはこちら
>>>4P・4Cについてはこちら
>>>4P:Productについてはこちら
>>>4P:Placeについてはこちら
>>>4P:Priceについてはこちら
>>>4P:Promotionについてはこちら
マーケティングの3つの視点
マーケティングの最小の実践単位は製品です。「どうしたら売れるか」「どんな製品を生み出すか」を考えますが、ほとんどの企業は複数の製品を持ち、それらをまとめた製品ラインを形成しています。例えば、味の素という会社には「麻婆豆腐」の製品があり、他にも「青椒肉絲」や「回鍋肉」の製品がありますね。これらは類似製品群として製品ラインと呼ばれるものを形成しています。ブランドで言うところのクックドゥのことです。こうなると、製品ラインを扱う食品事業の単位でマーケティングに取り組む必要が出てきますし、さらに全社的な取り組みとしてマーケティングを考えることになります。全社的な取り組みとしてのマーケティングは、後ほど記します。つまりマーケティングを扱う範囲は以下に分かれるわけです。
①製品単位のマーケティング
②事業単位のマーケティング
③企業戦略としてのマーケティング
日本には「虫の目、鳥の目、魚の目」という、異なる視点やアプローチの重要性を強調する比喩表現があります。
①虫の目:一つのことについてじっくり集中し、また多角的に見る視点
②鳥の目:俯瞰して全体を見る視点
③魚の目:未来への流れを読む長期的な視点
完全には一致しないので、無理やり感は否めませんが、マーケティングにも「虫の目:個別製品を見る製品マーケティングの視点」「鳥の目:製品ラインを扱う事業単位のマーケティングの視点」「魚の目:企業の目的目標達成のための企業単位のマーケティングの視点」のような視点が存在しているということです。こうした視点の違いがあるということも、マーケティングの情報の煩雑さを生んでいる要因かと考えました。
企業戦略とマーケティング
なぜ、全社的な取り組みとして「企業戦略としてのマーケティング」を考えるのか、また本や動画などで経営のような部分に言及するものが出てくるのかということについてです。本書では、マーケティングは「企業と市場との関わりを考えること」と述べています。市場について考えるのはもちろん、どの市場を選択するのかも重要です。こうした「個々の製品」を「どの市場」に投入するか、ということを考えることは企業のアイデンティティ形成に結びついてきます。つまり、「わが社は何屋さんなんですか?」「わが社は何をしている会社なの?」といった部分です。
本書では企業成長には「企業アイデンティティの形成」が重要で、「企業アイデンティティ」は「経営理念」と「事業ドメイン」によって決まるとあります。これについて、事業が先行している企業もあれば、経営理念に沿って事業ドメインを策定していく企業もあります。どちらが良いのかという話も起きそうですが、ひとまず本書では、日本の場合は前者の企業が多いとされているので、前者のパターンで考えていきます。まずは製品を市場に導入したとしましょう。この時、当然「製品単位のマーケティング」が必要になります。そこである程度成功していくと今度は企業が成長していくために多角化をすることになります。多角化にもいくつかありますが、既存のノウハウとシナジーが効きやすい成功した製品と近しい新製品を投入したとしましょう。これを繰り返していくと個々の製品はやがて、多角化によって製品ラインを形成していくことになります。これが企業にとっての事業ドメインということになり、企業のアイデンティティを形成していくことになります。当然、後者の場合は経営理念に沿って事業ドメインを策定するので、標的市場も事業ドメインに沿った市場になるはずです。いずれにせよ、標的市場の選択は企業アイデンティティに深く関わる部分であるため、マーケティングと経営は相互に影響し合う、近しい関係性になっているわけです。
最後に
以上マーケティングには、4つの要素と3つの視点があるということを書いてきました。こうしたことを改めて体系的に学ぶことで非常に気づきが大きかった一冊でした。本書ではこれらを踏まえて、さらにSTPや4Pについて一冊丸々使って説明を加えていきます。読むのにかなりカロリーを使う本だとは思いますが、一冊こうした教科書的な本を読むことでかなりマーケティングの全体像をつかむことに繋がるかと思います。ただ、本書はあくまでマーケティングの基本の基が学べるという本なので、これを読んだからと言って「一人前のマーケター」になれるわけではもちろんありません。これに加えて、自分の専門領域に関する知識を深めて行ったり、「心理学」や「経済学」場合によっては「法律」などを学んだりする必要が出てきます。そして、マーケティングはターゲットに対して行っていくものですから、自社のターゲットごとに4Pの個別最適化を目指して、PDCAを回していく継続的な活動が必要になります。一から勉強してこれに取り組むのは、とてつもなく大変なことなので、「マーケティングについて自分ではどうしようもない!」という方はぜひ熊本マーケティング研究所へご相談下さい!
【マーケティングサポート】
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