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新たに始まった「省力化投資補助金」は今年が狙い目

2024年6月25日に第1回公募がスタートした新しい補助金「中小企業省力化投資補助金」をみなさんはご存じでしょうか。
この補助金は、中小企業等の人手不足解消につながるIoTやロボット等の「省力化製品」の導入費用の一部を補助するものになります。省力化投資補助金の補助対象は、「製品カタログ」に登録した省力化製品になります。このカタログから、自社の課題・業種・業務プロセスにあった製品を選び、販売事業者と共同で申請します。「カタログ型」の補助金であり、ものづくり補助金や事業再構築補助金などとは異なるため、わかりにくいと考える方もいるかもしれません。
今回は、この「中小企業省力化投資補助金」をわかりやすく解説していきます。

 

 

中小企業省力化投資補助金とは

 

中小企業省力化投資補助金の目的

2023年度からの3年間を変革期間とすることを踏まえ、中小企業等の売上拡大や生産性向上を後押しするため、人手不足に悩む中小企業等がIoT・ロボット等の人手不足解消に効果がある汎用製品を導入するための事業費等の経費の一部を補助することにより、省力化投資を促進して中小企業等の付加価値額や生産性向上を図るとともに、賃上げにつなげることが目的となります。その際、IoT・ロボット等の人手不足解消に効果がある汎用製品で補助の対象となるものをあらかじめ登録・掲載し、中小企業等が選択して導入できるようにすることで、簡易で即効性がある省力化投資を促進します。
ポイントを3つにまとめると

①省力化製品が対象
②自社の課題・ニーズに合わせて製品を選ぶことができる
③導入を支援する「販売事業者」が申請・手続をサポート

となります。

 

 

中小企業省力化投資補助金の対象事業者と補助率・補助上限額

 

対象事業者

補助金を申請できる対象事業者は「日本国内で事業を営む中小企業」となっています。
中小企業の定義としては、

製造業その他… 資本金の額又は出資の総額が3億円以下の会社又は常時使用する従業員の数が300人以下の会社及び個人
卸売業… 資本金の額又は出資の総額が1億円以下の会社又は常時使用する従業員の数が100人以下の会社及び個人
小売業… 資本金の額又は出資の総額が5千万円以下の会社又は常時使用する従業員の数が50人以下の会社及び個人
サービス業… 資本金の額又は出資の総額が5千万円以下の会社又は常時使用する従業員の数が100人以下の会社及び個人

 

と「中小企業庁 中小企業・小規模企業者の定義」では定められています。

 

補助率・補助上限額

補助率は1/2、補助上限額は従業員数によって異なり、賃金引上げ要件を達成した場合は最大で1,500万円も補助される内容となっています。

※賃上げ要件を達成した場合、()内の値に補助上限額を引き上げ

 

 

 

中小企業省力化投資補助金の要件

中小企業省力化投資補助金には、基本要件と2つの目標が定められています。

 

基本要件

カタログに登録された省力化製品を導入し、販売事業者と共同で取り組む事業であって、以下の要件と目標を満たす事業計画に基づいて行われるものが補助対象となります。また、交付決定を受けてから実績報告を行うまでを補助事業期間、交付決定を受けてから補助事業が終了してから3回目の効果報告を提出するまでを事業計画期間となります。

≪基本要件≫

①導入する省力化製品に紐付けられた業種のうち少なくとも1つ以上が、補助事業者の営む事業の業種と合致すること。
②カタログに登録された価格以内の製品本体価格・導入経費を補助対象として事業計画に組み込むこと。製品本体の交付申請額を超えて製品本体を販売、購入することはできない。ただし、補助額の範囲外で、自費により導入経費を追加することは認められる。
③労働生産性の向上目標を設定し、その実現に向けて取り組むこと。
④補助上限額の引き上げを行う場合、賃上げの目標を設定し、その計画を従業員に対して表明するとともに、その実現に向けて取り組むこと。
⑤省力化製品を登録されている業種・業務プロセス以外の用途に供する事業ではないこと。
⑥労働生産性の向上に係る目標を合理的に達成することが可能な事業計画に沿って実施されること。
⑦効果報告期間が終了するまでの間、省力化製品の導入を契機として、自然退職や自己都合退職によらない従業員の解雇を積極的に行わないこと。
⑧取得する省力化製品に対する補助額(導入経費を含む)が500万円以上の場合、保険への加入を行うこと。

≪労働生産性の向上目標≫

特に「労働生産性の向上目標」と「賃上げの目標」が重要となってきます。補助事業終了後3年間で毎年、申請時と比較して労働生産性を年平均成長率(CAGR)3.0%以上向上させる事業計画を策定し、採択を受けた場合はそれに取り組む必要があります。なお、労働生産性の定義としては、

(付加価値額)=(営業利益)+(人件費)+(減価償却費)
(労働生産性)=(付加価値額)÷(従業員数)
(労働生産性の年率平均成長率)=
[{(効果報告時の労働生産性)÷(応募・交付申請時の労働生産性)}^(効果報告回数※)-1-1]×100%

※当該報告を含める。つまり、過去に効果報告を行った回数に1を加えた値となる。
となります。

≪賃上げの目標≫

「補助率・補助上限額」で述べたように賃金引上げ要件を達成した場合は補助上限額がプラス50%も増えます。その目標としては、以下の2点を補助事業期間終了時点で達成する見込みの事業計画を策定した事業者となります。

①事業場内最低賃金を45円以上増加させる
②給与支給総額を 6%以上増加させる

※申請時に賃金引き上げ計画を従業員に表明していることが必要
※自己の責によらない正当な理由なく、賃上げの目標を達成できなかったときは、補助額の減額を行います。

 

スケジュール

「基本要件」でも記載しましたが、中小企業省力化投資補助金の事業計画期間は3回目の効果報告を提出するまでとなっているので注意が必要です。

 

 

 

中小企業省力化投資補助金の対象経費

補助対象となる経費は「製品本体価格」と「導入経費」になります。

 

製品本体価格

補助事業のために使用される機械装置、工具・器具、専用ソフトウェア・情報システムなどの購入経費が補助対象です。製品本体価格は製品カタログに登録された価格を上限に申請できます。ただし、補助対象外となる経費があるので注意が必要です。

≪補助対象製品のカテゴリ≫

清掃ロボット / 配膳ロボット / 自動倉庫 / 検品・仕分システム / 無人搬送車(AGV・AMR) / スチームコンベクションオーブン / 券売機 / 自動チェックイン機 / 自動精算機 / タブレット型給油許可システム / オートラベラー / 飲料補充ロボット / デジタル紙面色校正装置 / 測量機 / 丁合機 / 印刷用紙高積装置 / インキ自動計量装置 / 段ボール製箱機 / 近赤外線センサ式プラスチック材質選別機 / デジタル加飾機 / 印刷紙面検査装置 / 鋳物用自動バリ取り装置 / 自動調色システム / 蛍光X線膜厚測定器 / 自動裁断機 / 原材料自動計量混合搬送装置 / 産業用枚葉デジタル印刷機

≪補助対象外となる経費≫

①補助事業者の顧客が実質負担する費用が省力化製品代金に含まれるもの。
②対外的に無償で提供されているもの。
③リース・レンタル契約の省力化製品。
④中古品。
⑤交付決定前に購入した省力化製品。
⑥公租公課(消費税)。
⑦その他、本事業の目的・趣旨から適切でないと中小企業庁及び中小機構並びに事務局が判断するもの。

 

導入経費

省力化製品の設置作業や運搬費、動作確認の費用、マスタ設定等の導入設定費用が対象となります。導入経費についても補助対象外となる経費があるので注意してください。

≪補助対象外となる経費≫

①交付決定前に発生した費用。
②過去に購入した製品に対する作業費用や補助対象経費となっていない製品に対する費用。
③省力化製品の導入とは関連のないデータ作成費用やデータ投入費用等。
④省力化製品の試運転に伴う原材料費、光熱費等。
⑤補助事業者の通常業務に対する代行作業費用。
⑥移動交通費・宿泊費。
⑦委託・外注費。
⑧補助事業者の顧客が実質負担する費用が導入費用に含まれるもの。(補助事業者が試作を行うための原材料費に相当すると事務局が判断するもの。)
⑨応募・交付申請時に金額が定められないもの。
⑩対外的に無償で提供されているもの。
⑪補助金申請、報告に係る申請代行費。
⑫公租公課(消費税)。
⑬その他、本事業の目的・趣旨から適切でないと中小企業庁及び中小機構並びに事務局が判断するもの。

 

 

 

中小企業省力化投資補助金の応募・交付申請フロー

 

応募・交付申請フロー

中小企業省力化投資補助金の全体的なフローは以下の図のようになります。

 

申請のステップ

申請のステップとしては、

STEP1 補助金の理解
STEP2 gBizID取得
STEP3 カタログから製品選定
STEP4 販売事業者の選定
STEP5 販売事業者と共同申請

となっています。ポイントとしては「STEP5 販売事業者と共同申請」です。
補助金申請は製品の販売事業者と共同で事業計画の策定が必要になり、中小企業等と販売事業者は共同事業実施者として公募期間内に販売事業者と共に申請受付システムで申請を行います。

中小企業のみなさまは、販売事業者からの招待をもって、専用フォームからの申請が可能になります。

 

 

 

まとめ

中小企業省力化投資補助金は今年から始まった新しい補助金ということもあり、あまり多くの人に知られていない補助金になります。2024年10月から、ようやく全国各地で中小企業省力化投資補助金の説明会が開始されたばかりです。
また当初予定していた予算消化が芳しくないためか、申請条件やルールが緩和されてきています。

・これまで原則として製品の置き換えは補助対象外だったものが、一部機能・性能を有している省力化製品については置き換えであっても交付申請が可能
・一度採択・交付決定を受けた後は再度の応募・交付申請ができなかったが、各申請における補助額の合計が補助上限額に達するまでは、複数回の応募・交付申請が可能

というように、この補助金は今年が非常に狙い目となっています。中小企業の皆さんはできるだけ補助金を活用して設備投資をしないともったいないというくらい、現在は様々な補助金が出ていますので、これからも補助金に関する情報を随時お届けしていきたいと思います。

>> 中小企業省力化投資補助金