皆さんお久しぶりです、マーケターの宮﨑です。前回は有斐閣アルマの「マーケティング戦略」という本を紹介しました。改めて「基礎って大事だな」と私自身が感じた一冊でした。そこで、基礎的な本や、ベストセラー本を今更読んでみるということに取り組んでみました。そんな中で読んだ一冊についてコラムを書くことにしました。今回は、安宅和人著「イシューからはじめよ」についてです。こちらの本、累計発行部数58万部を突破しているベストセラー本なのでご存知の方も多いかとは思います。本棚に並べて満足していたのですが、読んでみると「なるほどな」と思うことが多くありましたのでコラムにまとめてみましたので、良かったらお付き合いください。
価値ある仕事
仕事は課題解決の連続です。難しい課題から簡単な課題、そうした課題を解決することで価値を生み出していくことが仕事かと思います。より高い価値をいかに効率よく生み出すのかこれが生産性です。生産性高く、質の高い価値を生み出すためにはどうしたらいいか、というのが本書で扱っていることです。
アウトプットは「イシュー」と「解の質」
日々の仕事に取り組むにあたって、クオリティの高いアウトプットをしようとした場合、「解の質(アウトプットの質)」を上げるということに集中してしまいがちです。例えば「良いイベントを企画しよう」とした場合「イベントの内容」に目が向きがちになるといった感じです。本書では、高い価値を生み出すには、まず「イシュー(何を課題とするか)」が必要でその上で「解の質」が必要だと語っています。課題を解く前に「何が課題なのかを見極めよう」ということです。
イシューとは
イシューとは、ひとことで言うと「本当に取り組むべき課題」のことです。与えられた課題に対して「何を取り組むべき課題」とするのか、ここが非常に重要になります。例えば、「売上を上げたい」という課題に対して、考えられる手段は無数に存在します。しかし「売上獲得を阻んでいる要因は何か?」ということを考えていきます。そうすると、売上に対するボトルネックが見えてきます。例えば「認知が足りていない」「商談の質が低い」などなど。そのうち、この局面でまず取り組むべき課題は何かを見極めて取り組むということです。イシュー無しに取組みを行うと、課題に対して投入するコストが大きくなり生産性が落ちてしまうことや、仮に売上が上がったとしても、そのメカニズムが分からないので再現性がなく、次の課題や次の打ち手に繋がりません。なのでイシューは何なのかをはっきりさせてから行動に移すということが重要になってきます。
一次情報にあたれ
イシューの設定をしていく中で、本書で重要だと示されていたことがいくつかあります。その中で特に実感として重要だなと感じたのは「一次情報にあたれ」ということです。今やGoogleなどで調べれば、手っ取り早く適当な情報を取得することは簡単になりました。しかしそれだけでは課題を分解しボトルネックを探り、イシューを得ることはできません。ここで一旦、分かりやすさのために用語の説明です。リサーチや統計の世界で情報というと二種類存在します。
一次情報
自分が直接体験して得た情報や、自分で行った実験や調査から得られた情報の事です。
二次情報
他者の持つ一次情報のことです。他人の体験談や、Googleで検索して取得するアンケート調査などはこの二次情報です。
この二種類の情報のうち、一次情報にあたれというのが本書の主張です。つまり自分で情報を取りに行く、生の声を聞きに行くということです。もちろん二次情報がいらないという話ではなく、二次情報では分からないこと、限界があるということを言っています。
二次情報は現象自体を説明しない
前述した通り、目的の情報を取得するのはさほど苦労しない時代です。特にアンケート調査などのデータは、検索すれば山ほど取得することができます。ではなぜ一次情報が必要なのか、それは二次情報は現象そのものを説明していないからです。イメージでお伝えすると、現象自体は下図のような形をしているのに対し、二次情報はその断面を示しているということです。なので、イシューを立てる際には二次情報だけでなく自分の目的に合わせた一次情報を取得することで、現象に対しての理解を深めることが重要です。ここに取り組むことで、課題を分解しイシューを発見することに繋がります。マーケターとして働いていく中で、実際のユーザーと話してみると、発見が多く得られることがあります。なので「一次情報にあたれ」というのは実感として、大事だと感じました。こうした一次・二次情報を基に施策のブラッシュアップや、そもそもの「イシュー」をさらに磨くことができます。
マーケティングの世界でも
マーケティングでも本書の「イシュー」と同じような考えが必要となる場面は多いです。似たような考え方として、例えば「KGI」と「KPI」というものがあります。
KGI(Key Goal Indicator:重要目標達成指標)
KGIは、企業が最終的に達成したい目標を数値化したものです。いわば、企業のゴール地点を示す羅針盤のような役割を果たします。売上高、利益率、顧客満足度などが代表的なKGIの例です。KGIは、企業全体の戦略と深く結びついており、長期的な視点で設定されます。
KPI(Key Performance Indicator:重要業績評価指標)
KPIは、KGIを達成するために設定される中間的な目標です。KGIを達成するために、どのような行動や活動が必要なのかを具体的に示す指標となります。例えば、売上高をKGIとした場合、KPIには「Webサイトへの訪問数」、「成約率」、「客単価」などが考えられます。KPIは、KGI達成のための具体的な施策を評価するための尺度として活用されます。
KGI達成のためには、どんなKPIを設定するのかということを考え、設定されたKPIに対しての進捗を追って、施策の改善実行を繰り返していくということをマーケティングではやっていきます。これが本書の「イシュー」というのに近いと感じました。ただKGIに対して、適切なKPIを設定できるかどうか、これはなかなか難しいことです。課題を分析し、課題を引き起こしているボトルネックを探っていくことになります。本書では、こうしたイシューやKPIの設定・発見においては、他者の意見を取り入れることも有効だとあります。業界の常識や慣習慣例にとらわれない考察が、イシューを探る段階では重要です。課題はあるが「どんな手段を取るのが最善か分からない」や「ユーザーへのリサーチのやり方がわからない」という方は、熊本マーケティング研究所のマーケティングサポートをご活用ください。様々な専門知識や経験を持つマーケターが皆様のマーケティングのサポートをいたします。