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今月の一冊⑮『採用100年史から読む 人材業界の未来シナリオ』

2025年の最初のコラムとなります!マーケターの高宗です。皆様今年もよろしくお願いいたします。
今回私が紹介するのは、「採用100年史から読む 人材業界の未来シナリオ」です。私たちは今、当たり前のように目にする「求人広告」。その歴史はその後150年以上前まで遡ります。1872年7月14日、日本初の求人広告が東京日日新聞に掲載されていますそれ以来、求人広告は社会の変化に合わせて進化し、特に新卒採用の分野では、情報誌、インターネット、AIなど、今度は新しい手法が登場していきます。このコラムでは、日本における求人広告と新卒採用の歴史を時代ごとに振り返りながら、採用手法の進化とその背景を紐解いていけたらとおもいます。

 

 

著者紹介

黒田真行(くろだ・まさゆき)
1965年生まれ。1988年 リクルート入社。「B‐ing」「とらばーゆ」「フロム・エー」関西版編集長を経て、2006年から2013年まで「リクナビNEXT」編集長、その後「リクルートエージェント」ネットマーケティング企画部長、「リクルートメディカルキャリア」取締役などを歴任。2014年、ルーセントドアーズ株式会社を設立し、35歳以上のミドル世代を対象とした転職支援サービス「Career Release40」を運営。2019年、転職を前提としない中高年のキャリア相談プラットフォーム「CanWill」開設。また、転職メディアや人材紹介事業などの人材ビジネス各社の経営課題解決を支援する事業強化コンサルティングも展開している。著書に『転職に向いている人 転職してはいけない人』(日本経済新聞出版社)、『40歳からの「転職格差」 まだ間に合う人、もう手遅れな人 』(PHPビジネス新書)。

佐藤雄佑(さとう・ゆうすけ)
株式会社ミライフ代表取締役。新卒でベルシステム24入社、マーケティングの仕事に従事。そこで「やっぱり最後は人」だと思い、リクルートエイブリック(現在のリクルートキャリア)に転職。法人営業、支社長、人事GM、エグゼクティブコンサルタントなどを歴任。MVP、MVG(グループ表彰)などの表彰多数受賞。リクルートホールディングス体制構築時(2012)には人事GMとして、リクルートの分社・統合のプロジェクトを推進。2016 年、株式会社ミライフ設立。未来志向型キャリアデザインエージェント事業、戦略人事コンサルティング事業、働き方変革事業などを展開している。早稲田大学ビジネススクール(MBA)卒業、米国 CCE,Inc 認定GCDF-JAPANキャリアカウンセラー。著書に『いい人材が集まる、性格のいい会社』(クロスメディア・パブリッシング)がある。

 

1960年代:就活のパイオニア、「企業への招待」の誕生

1962年、大学新聞広告社(現リクルートグループ)が新卒向け求人情報「企業への招待」を発行しました。それまでの推薦誌や縁故による就職活動とは異なり、学生が自ら就職先を選ぶという新しい価値観を提案しました。このメディアは当時の就活文化を大きく変えたパイオニアの存在でした。1969年には「企業への招待」が「リクルートブック」に名称変更され、掲載内容がさらに充実しました。学生にとって、就職活動のための重要な情報源となりました。

 

1970~1980年代:適性検査と合同企業セミナーの登場

1974年、採用活動のために適性検査「SPI」が登場しました。これにより、学生が一度に複数の企業と接点を持てる場が提供されました。 その後、ディスコが1987年留学生向けの「キャリアフォーラム・イン・USA」を開始しました。日本国内で新卒採用の手法が広がり、1990年代には「リクナビLIVE」や「マイナビEXPO」など、より多くの合同セミナーが誕生しました。また、1983年に創刊された「就職四季報」も新卒採用市場に大きな影響を与えました。この書籍は、企業の初任給や離職率、労働環境といったデータを網羅し、学生が客観的な情報をもとに就職先を選ぶことが可能となりました。

 

1990年代:インターネットが求人市場を変革

1990年代後半、インターネットの普及により求人広告は紙媒体からウェブ媒体へと移行します。1996年にリクルートが「リクルートブック・オン・ザ・ネット」を開始し、次回には「リクルートナビ(リクナビ)」へ名称を変更しました。同時期に登場した「マイナビ」もWebメディアを活用した求人情報の提供を強化しました。これにより、学生はオンラインで複数の企業情報に簡単にアクセスできるようになり、就職活動の利便性が飛躍的に向上しました。

 

2000年代:逆求人イベントと新卒紹介サービスの普及

2000年代に入ると、「就職エージェント」や「キャリタス就活エージェント」などの新卒紹介サービスが登場しました。これらのサービスは、求人広告だけでは補えない母集団の形成を支援するサービスとして、多くの企業で導入されました。また、2005年頃から「逆求人イベント」が始まりました。学生が自らPRし、企業が積極的にアプローチするスタイルは「攻めの採用」の代表例です。ジースタイラスの「逆求人フェスティバル」やアイデムの「JOBRASS新卒」をはじめ、多くのイベントが開催され、企業が直接優秀な学生と出会う機会を創出しました。

 

2010年代:SNSとダイレクトリクルーティングの広がり

2010年代には、FacebookやTwitter(現在はX)などSNSの普及を背景に「ソーシャルリクルーティング」が登場しました。企業がSNSで情報発信し、学生との接点を増やすこの手法は、特にWantedlyのようなツールの普及によってさらに拡大しました。同時期には、学生のプロフィールに基づいて企業が直接アプローチする「ダイレクトリクルーティング」が台頭します。「OfferBox」や「キミスカ」はその代表的なサービスで、企業が積極的に「会いたい学生」を目標としてアプローチする手法が一般化しました。

 

2016年以降:AIとミートアップが採用の新常識に

2016年以降、AIを活用した新しい採用手法が登場。「GROW」や「OfferBox」では、AIが学生データを分析し、マッチング精度を向上させ、 効率的な採用活動が可能となりました。また、企業と学生の交流を深めるための「ミートアップ」も普及しています。例えば、Sansan株式会社が開催した「お寿司パーティー」など、カジュアルなイベントで学生との接点を増やす取り組みが行われています。

上記に時代の変遷を記載していきましたが、150年以上の歴史を持つ求人広告は、時代ごとにその形を進化させてきました。情報誌やWeb広告、逆求人、SNS、AIといった新しい手法が徐々に登場し、企業と学生の距離を縮めてきました。これからもテクノロジーの進化により、手法の採用はさらに多様化していきます。企業はこれらの手法を柔軟に取り入れ、自社に最適な採用スタイルを構築することが求められます。学生も様々なツールを活用し、自分に合った企業を見つける力を磨くことが必要です。求人広告の歴史から学べることは多いですが、共通しているのは「人と企業をつなぐ」という本質的な役割です。

 

おわりに

今回は「採用100年史から読む 人材業界の未来シナリオ」をご紹介しました。そもそもなぜこの本を読もうと思ったきっかけとして、採用の歴史を知りたいと思い探した際に出会いました。最近いろいろな経営者の方と会う中で「過去を知ることは大切」という言葉をよく耳にします。人事関係の仕事をしていく上で歴史を知ることも重要かと思います。当社では、人事制度を仕組み化するサービスを提供しています。「採用」の仕組み化にも取り組んでいますが、まずは自社を振り返る事、代表がどういう想いで起業をしたかなど、その原点から掘り下げて仕組み化していきます。言うなら、会社の歴史を知り今後どういう人材が必要なのかを考えていくサービスになります。ぜひ、コラムを読んだ方でご興味ある方は読んでみてください!

熊本マーケティング研究所の提供サービス「InMark採用サポート」について