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人事評価は本当に公正か?— 企業が陥る評価の落とし穴

はじめに

InMark部門を担当しているマーケターの高宗です。今回は、経済産業省のレポートなどを基に、人事評価についてお伝えします。人事評価制度は従業員のモチベーションや成長、ひいては企業の競争力に大きく影響を与える重要な要素です。しかし、多くの企業では評価制度が十分に機能しておらず、従業員の不満や不信感を招くケースも少なくありません。では、公正な評価とは何か? 公正な評価の条件と、企業が陥りがちな評価の落とし穴について考察していきます!

 

1. 公正な評価とは何か?

公正な評価を実現するには、以下の要素が必要です。

・透明性:評価基準が明確で、社員が納得できるもの
・一貫性:同じ基準で全社員が評価されること
・客観性:個人の主観を排除し、データや事実に基づくこと
・成長促進:評価が単なる査定ではなく、社員の成長につながること
実際には、これらを満たせていないケースが多く、評価に対する社員の不満や不信感が生じています。

 

2. 企業が陥る評価の落とし穴

(1) 評価者のバイアス(無意識の偏見)
評価は人が行う以上、主観的なバイアスが入りやすくなります。例えば、「ハロー効果」により、特定のスキルが優れている社員が全体的に高評価を受ける、「親近効果」によって評価者と価値観が近い社員が高評価を受けやすい、といったケースがあります。
事例:あるIT企業では、営業成績の良い社員が「リーダーシップも優れている」と評価される傾向があり、実際にはマネジメント能力に課題のある社員が昇進してしまった。

(2) 「成果主義」だけに偏る評価
成果主義が強調されすぎると、短期的な結果を出しやすい社員ばかりが評価され、長期的な成長やチーム貢献が軽視されるリスクがあります。
事例:経済産業省の調査によると、成果主義を重視する企業のうち約65%が「長期的な人材育成が課題」と回答しています。

(3) 上司による評価のバラつき
評価基準が曖昧なままだと、同じ会社内でも上司ごとに評価の基準が異なり、社員の納得感が低下します。
事例:ある製造業の企業では、A部門の上司は「チームワーク重視」、B部門の上司は「個人の成果重視」という違いがあり、社員の間で評価への不満が募っていた。

(4) フィードバック不足による納得感の欠如
評価の結果が伝えられない、または不十分なフィードバックしか行われない場合、社員のモチベーション低下につながります。
事例:経済産業省によると、定期的なフィードバックを受けている社員は、受けていない社員に比べてエンゲージメントが約3倍高いことが報告されています。

 

 

3. 公正な評価を実現するために

(1) 明確な評価基準の設定
・成果(定量評価)と行動(定性評価)のバランスを取る
・評価基準を明文化し、全社員に周知する

(2) 多面的な評価の導入
・360度評価(上司・同僚・部下からの評価)を導入
・チーム評価と個人評価の組み合わせを検討

(3) 評価者の教育
・バイアスを減らすための評価者研修の実施
・評価者間で評価基準をすり合わせる「キャリブレーション会議」の導入

(4) 評価後のキャリア支援
・評価結果をもとに、キャリア成長の機会を提供
・昇給・昇格だけでなく、研修機会の提供と連動させる

 

4. まとめ

人事評価が「査定」ではなく、「成長支援」として機能すれば、社員のモチベーション向上と企業の発展につながります。

・バイアスを排除し、透明性を高める
・成果だけでなく、プロセスも評価する
・上司による評価のバラつきをなくす
・フィードバックを充実させ、納得感を高める

評価制度は一度作ったら終わりではなく、常に改善を繰り返しながら運用していくことが重要です。企業が本当に公正な評価を目指すならば、制度の設計だけでなく、社員との対話を通じて評価の納得感を高める努力が求められます。

参考資料

経済産業省: 「人的資本経営の実現に向けた検討会 報告書 」
経済産業省: 「未来人材ビジョン」

 

最後に

今回、人事評価制度についてコラムを作成しました。公正な評価の実現には単なる制度の設計以上に、企業文化や評価者の意識改革が欠かせません。特に、評価者のバイアスやフィードバック不足といった課題は、多くの企業で実際に発生しているのではないでしょうか?企業が成長を続けるためには、評価を「査定」ではなく「対話の場」として活用し、従業員とともに成長していく姿勢が求められるのではないかと思います。もし評価制度にお悩みでどうしたらいいか分からないという方は、ぜひ弊社の「InMark評価サポート」のご利用をご検討ください。公正な評価の仕組み化を全力でサポートし、課題解決のお手伝いをいたします!詳しい内容については、以下のリンクからご覧いただけます。興味のある方はぜひクリックしてください。

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