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コトラーのマーケティング1.0~5.0<5.0編>Part2

みなさんこんにちは!サポーターの薄井です。
さて、今回はコトラーのマーケティング変遷最後となる【コトラーのマーケティング<5.0編>Part2】をお届けします。

〰さらっとおさらい〰
マーケティング1.0~5.0って?
アメリカの経営学者で「現代マーケティングの父」、「マーケティングの神様」と評されるフィリップコトラーによって提唱されたマーケティングの変遷を現したものです。
【1.0】製品自体の特長や性能、品質を重視し、顧客のニーズやウォンツ、市場の変化は重視しない「製品中心」のマーケティング
【2.0】企業が「製品中心」から「顧客中心」にシフトし、顧客のニーズに応えるためのマーケティング
【3.0】企業が社会的責任を果たし、顧客と共に持続可能な価値を創造することを重視した「社会志向」マーケティング
【4.0】ただ製品を認知してもらい購入してもらうだけでなく、製品のファンになってもらい、顧客自ら製品の推奨をしてもらうことを重視した「自己実現」にフォーカスしたマーケティング

前回のPart1では5.0の背景となった「世代間ギャップ」「富の二極化」「デジタルデバイド」の3つの要素についてみていきました。今回はマーケティング5.0で重要となる5つの構成要素についてみていきましょう!

マーケティング5.0 【2020年代~】


コトラーは次のように定義しています。
『マーケティング5.0とは、人間を模倣した技術を使って、カスタマージャーニーの全工程で価値を生み出し、伝え、提供し、高めることだ』
つまり、ビッグデータを活用し、AIやIoTなどの最新のテクノロジーを駆使することで、人間の行動や意思決定を模倣し、カスタマージャーニー全体を通じて顧客体験価値(CX)を高める時代にあるということです。顧客体験価値の向上はマーケティング4.0の時代から重要視されていましたが、活用できるテクノロジーの種類が限定的といった課題がありました。マーケティング5.0の時代ではさらにテクノロジーが進化し、「人間の知能とコンピュータの知能」をバランスよく組み合わせて効率的なマーケティングを行うことで、顧客体験価値の向上を実現させることが可能となりました。

5つの構成要素


マーケティング5.0は、次の5つの構成要素を活用することで、デジタル技術と人間の知能を融合させ、より深い顧客理解とパーソナライズドな体験を提供することを目指しています。5つの構成要素は、2つの規律(ベースとなるもの)と3つのアプリケーションとに分かれおり、3つのアプリケーションは対立するものではなく、相互に補完しあう関係にあります。

まずは2つの規律についてみていきましょう。
①データドリブン・マーケティング
AIやビッグデータを活用し、顧客行動や市場動向をリアルタイムで把握・分析し、そのデータに基づいて意思決定を行います。これを最適化するためにデータエコシステムを構築することが重要です。

✍プチ解説1

ビッグデータって?
人間が全体を把握することが困難な巨大なデータ群(種類や様式は様々)のこと
例)ソーシャルメディアデータ・マルチメディアデータ・ウェブサイトデータ・カスタマーデータetc…

✍プチ解説2

データエコシステムって?
さまざまなデータが組織やシステム間で相互に連携し、価値を創出するためのネットワークや環境のこと
このエコシステムは、データ収集・保存・分析・共有するプロセスを効率化し、異なるステークホルダーが協力してデータの利用を最適化する仕組み

 

②アジャイル・マーケティング
分散型、部署横断型のチームを使って、製品やマーケティング、キャンペーンのコンセプトづくり、設計、開発、検証を迅速に行い、絶えず変化する市場に組織の俊敏性をもって対処していきます。

次に3つのアプリケーションについてみていきます。
③予測マーケティング
機械学習を用いた予測分析ツールを使用し、未来のトレンドや顧客の行動を予測することで、より先手を打ったマーケティング戦略を展開します。消費者のニーズを予見し、最適な施策を実行します。

④コンテクスチュアル・マーケティング
IoTや様々なデジタルデバイスから得られるデータを活用して、顧客の経験・記憶(文脈)に沿ってパーソナライズされた情報やコンテンツを提供する活動です。顧客のこれまでの検索履歴や、サイトの滞在時間などを活用して、最適な内容の広告を最適なタイミングで顧客に提供します。

⑤拡張マーケティング
チャットボットやバーチャル店員など、人間を模倣した技術を使って、人間の能力を拡張し、より効果的なマーケティング活動を実現します。これにより、マーケティングプロセスを効率化し、より大規模かつ精緻な施策が可能となります。

データドリブン・マーケティングを前提として、3つのアプリケーションを活用することで、アジャイル・マーケティングを実現できる組織体制を作り上げていきます。これにより、企業は顧客の期待に応え、変化する市場に柔軟に対応しながら持続可能な成長を実現できるのです。

例えば、スポーツブランドのNike。Nikeは商品・サービスの開発・宣伝において、マーケティング5.0を活用しています。NikeアプリやNike+メンバーシップを通じて、ユーザーの購買履歴やトレーニングデータを収集・分析し、個々のニーズに合わせた商品・サービスの提供に役立てています(データドリブン・マーケティング)。適切なターゲティング広告の発信や、新たな商品・サービスの開発にもビッグデータが活用されています。AIによる機械学習を用いて、顧客のライフスタイルや運動習慣を予測し、最適なシューズやウェアを提案しています(予測マーケティング)。また、位置情報や天候データと連携し、状況に応じたプロモーションを行うことで、より効果的なマーケティングを実施しています(コンテクスチュアル・マーケティング)。現在は、実際に店舗で試着するだけでなく、自宅で快適にショッピングを楽しめるサービスの需要が高まっています。Nikeはこのニーズに応え、AR技術を活用した「Nike Fit」で足をスキャンし、最適なシューズサイズを提案するサービスを提供。また、Nike Training Clubアプリでは、AIを活用したパーソナルトレーニングプランを提供し、ユーザーの継続的な運動をサポートしています(拡張マーケティング)。
引用元:Nike Fit

総まとめ


これまで6回にわたりコトラーのマーケティング変遷をお届けしてきました。企業が持続的に成功するためには、これらの変遷を理解し、顧客との関係性を絶えず深化させていくことが求められています。社会や環境、技術の変化・進化に合わせてマーケティングも変化・進化していかないといけないことがよくわかりましたね。今後もさらなる技術革新が進むことでしょう。ただし、あくまでも主体は人間であり、テクノロジーからマーケティングを考えるのではなく、実現したいマーケティング戦略のためにテクノロジーをどう活用していくのかを考えなければなりません。あくまでもプロセスの中心にいるのはテクノロジーではなく【人間】なのです。このコラムを通して私自身もテクノロジーと『共存』していくことが“鍵”となるのだなと痛感しました。

これまでのコラムはこちらからご覧いただけます。
<1.0編>
<2.0編>
<3.0編>
<4.0編>
<5.0編>Part1

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