コラム

Column

え!こんな売れ方してるの?今どき漫画家のブランディング

元気ですか!
熊本マーケティング研究所 広報野田です。

突然ですが、
最近、漫画読んでますか?

10代の頃、ドラゴンボールや幽遊白書など
ジャンプ全盛期に育った僕は漫画で漢字を覚えたと言っても過言ではありません。

その頃は、ほんと数え切れない数の漫画を読みました。

 

でも、最近ふと気づいたんですよ。
あの頃より、今のほうが漫画読んでる気がする、、、、って。

昔は、週刊誌か単行本を買うか、立ち読みくらいしか漫画を読む手段がなかったのが
今ではスマホやPCでいつでもどこでも読めちゃう。

昼飯食べながら
休憩時間に
空き時間に
寝る前に

気づけば、誰も知らないB級漫画を夜中に最後まで読んでしまう日も。
4Pでいう、PLACEがこの数年でガラッと変わってしまいました。

そんな令和の漫画業界のブランディングについて今日は書きたいと思います。

 

 

 

 

 

SNSから火がつく!多様化するブランディング。

みなさん
「左ききのエレン」という漫画をご存知でしょうか?
広告代理店を舞台にしたクリエイターの群像劇を描いた漫画です。
https://shonenjumpplus.com/episode/13932016480029111789

僕を含め、世の制作業者が一度は経験しただろう口が砂漠になるようなしんどいエピソードや鳥肌が立つようなカタルシスを味わえる漫画で、その生々しい内容は業界で話題になり、

今では累計100万部を突破するヒット作です。

実は、この漫画
元々は一人の広告代理店のクリエイターがネットで無料で書いていた作品なんです。


その人の名前は「かっぴー」
当時、広告代理店に務める社員でした。
https://cakes.mu/posts/12577

 

僕は、このかっぴーさんがcakesに書いた1話目の左ききのエレンが偶然ツイッターのタイムラインで流れてきて読み始めました。

当初は絵も荒削りで、ネット上に存在する玉石混交のウェブマンガのひとつでした。
しかし、自身の広告業界での経験を元にしたリアルな内容と脚本の巧みさ

そして何より、広告業以外の人まで感動させてしまう話の盛り上げ方で次第に話題になっていきます。

画力という武器を持っていないことを理解した上で
「広告業界」というニッチなジャンルに特化し一部の層の心に深く刺したことで
「ファン」を増やしていく非常に巧みなブランディングだと感じました

さらに、今では知ってる人が少ないですが
かっぴーさんは元々ギャクマンガも書いてました。


SNSポリス
https://www.sns-police.com/


オシャレソムリエ おしゃ子
https://cakes.mu/series/4535

どちらもアニメ化やドラマ化されるほど人気の作品でしたが
左ききのエレンのヒットと共に徐々にギャクマンガの路線は抑えていきました。
この辺も選択と集中が上手だなーと思います。

 

 

 

 

 

ウェブから生まれる大ヒット作。

先程の左ききエレンを始め、

「え!あの漫画も?」というタイトルもウェブマンガが原作だったりします。

 

累計発行部数2400万部の大ヒット漫画
「ワンパンマン」
も実はウェブマンガから始まっています

http://galaxyheavyblow.web.fc2.com/fc2-imageviewer/?aid=1&iid=2

 

上記の1話目をみていただければ分かる通り個人が楽しんで書いているような漫画ですし

編集社の持ち込みしたり賞レースの応募しても通る可能性は低い気がします。(そもそも当初はアンパンマンのパロディみたいなものだっと思います。)

しかし、ワンパンマンは徐々にウェブ上で話題を呼び1日2万回近く閲覧され累計1000万人以上の人が読んだと言われています。

転機が訪れたのは作者が漫画家として活動しようと仕事を辞めた時にワンパンマンの読者であったアイシールド21の作者として有名な漫画家である村田雄介がツイッターでコンタクトを取り、共に漫画を制作することをもちかけたそうです。

村田雄介いえば漫画業界でも1~2位を争うほど画力が高い漫画家として有名です。

シンプルでユニークな原作を超絶技巧の漫画家が表現する。
二人がタッグになったことでワンパンマンは一気にヒット作への階段を駆け上がります。

漫画だけではなく、アニメ化もされ更にはハリウッドで映画化される段階まで話が進んでいるそうです。

ワンパンマンの原作者であるONEさんのブランディングが上手かった点は
週刊誌では評価されにくいネット特有の「軽さ」が良かったんじゃないかと思います。

 

ウェブマンガは、
「よし!漫画を読むぞ!
というより、

「ツイッターでたまたま流れてきた1コマ」
のような場合がほとんどです。

「全ての敵を1撃で倒してしまうヒーロー」

というシンプルなテーマでストーリー上どんなに敵の強さのインフレが起きても一撃で倒してしまうという格闘系漫画のジレンマすらネタにする皮肉さもウェブで受ける要因だったと思います。

これが20年前だったらまずヒットするまでたどり着けなかったでしょう。
まさに現代ならではのブランディングですね。

 

 

 

 

 

週刊誌からウェブマンガへ。


週刊少年ジャンプ
全盛期は発行部数600万部という信じられない数字を叩き出した週刊少年誌です。

しかし、その発行部数は雑誌離れの時代もあり下がり続け
いまでは140万部ほどになっています。(それでも十分モンスター雑誌ですが)

今までのジャンプのヒット作品は賞レースや持ち込みから始まり
数少ない連載枠を勝ち取ってようやく連載が開始しても人気がなければ容赦なく打ち切りになるというシビアな世界でした。

その仕組上、どうしても
「ヒットしやすいプロット」や「受け入れやすい分野」の漫画になりやすく
似たような漫画が増えたのは否めません。

その流れが変わり始めたのが2014年。
集英社がジャンプの電子版やオリジナル作品をネットで配信する「少年ジャンプ+」を創刊しました。

ここでは、過去の連載作品や現在連載中の作品を読めるのはもちろん
「少年ジャンプ+」オリジナルの作品も多数発表されました。

当初は雑誌の二軍的な見方も多くありましたが
雑誌ではみかけないユニークな漫画やシュールな作品も多く
さらにウェブ上で公開されているためSNS等の拡散性も非常に高い傾向にありました。

そして、ヒット作が続々と誕生します。

ファイアパンチ(発行部数累計40万部のちにチェンソーマンを連載し累計1100万部)
終末のハーレム(発行部数累計500万部)
彼方のアストラ(発行部数累計1000万部 アニメ化)
約束のネバーランド(発行部数累計3200万部 アニメ化 映画化)
SPY×FAMILY(発行部数累計1250万部)
怪獣8号(史上最速で400万部突破)

本誌にも劣らないモンスター級のヒット作品ばかりです。
現在の週間アクティブユーザー数(WAU)は
約400万と言われています。(1週間で400万人の人がサイトに訪れるもしくはアプリにログインしている)

 

おそらく、あと数年で紙とウェブが逆転するでしょう。
そして漫画家自身のブランディングもただ漫画を書き続けるだけでなく
SNSなどで活動しファンを増やし続けることで初速を上げ多少マニアックなテーマの漫画でも安定した閲覧数をキープすることが可能になります。

 

 

 

 

 

100日後に炎上することもある。

現代の漫画家が気をつけるべき教科書として語り継がれるであろう事例があります。

それは
「100日後に死ぬワニ」
という漫画です。

これは、イラストレーターのきくちゆうき氏がツイッター上で書き始めた漫画で
毎日1ツイート4コマで投稿する形です。

 

そういった漫画は今までもよくあったが、この漫画の特異な点は
「タイトルで結末を宣言していること」
「読者がリアルタイムで結末へ近づいていくこと」
の2点です。

 

ほのぼのとしたワニと仲間たちの何でも無い毎日が描かれているのですが
その日常が当たり前すぎるほどタイトルとのギャップが際立つため
後半に進むにつれ歴史的に残る拡散がされ
連載終了時のツイッターのとトレンドで世界一位になってしまいました。

それだけならウェブ発信漫画の伝説として語り継がれたでしょう。
しかし、終了後の展開が失敗でした。。

100日後の最終回が終わり、そのあとすぐに
いきものがかりが歌うコラボムービーが発表され
特設サイトが公開しとんでもない数のグッズが売られました。

「死」というセンシティブな題材を取り扱った作品で
多くの読者が感傷に浸っている時に行ったことで
大炎上をしてしまいました。

そして、この作品自体が最初から大手代理店が仕組んだステマだったという話まで浮上しました。

実際は当初は、きくちゆうき氏が趣味で投稿していたのだが、あまりにも拡散され話題になったことで途中から商品化等の話が出てきたそうです。

これは完全にプロデュース側のブランディングミスだと思います。
普通に考えれば分かりそうだが中にいると近視眼的になってしまう事例です。

偶然にも「歴史に残るウェブマンガのマーケティング手法」と「歴史に残るウェブマンガのブランディングの失敗」という両方を含んだ稀有な事例だと思います。

 

 

 

 

 

漫画家も戦略とパートナーが重要な時代。

これまで書いてきたように、現代では様々な方法でヒット作が生まれる時代になりました。
子育てブログで書いていた漫画が
SNSで趣味で投稿していた4コマが
TikTokで投稿していた漫画動画から

今まで一部の編集者の手によって取捨選択されてきた才能が
自力で売れてしまう面白い時代です。

しかし、一方で才能があっても手法が悪ければ埋もれやすくもなってしまいます。(セルフブランディングが上手な漫画家が増えてきているため)

つまり「戦略」と「パートナー」が重要な時代だと言えます。
ターゲットを決め、題材を考え、ユーザーのボリュームゾーンを想定し
SNSやウェブ広告などを使い上手に認知拡大をする。

また、企業の広告漫画の需要も非常に高まっており
漫画で利益が出ない時期は広告漫画で稼ぐ人もたくさんいます。

上手に描いて、上手に売れる。
もしかしたら今後マーケティング研究所でも漫画家さんのサポートができるかもしれません(笑)

それでは、今日は今どきの漫画家さんのブランディングについて書きました!
また本コラムでお会いしましょう!

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